参考資料6
海外漁業協力の経緯と実施
参考資料:水産年鑑1999
(1)海外漁業協力財団設立の経緯
1952年に戦後占領軍によって設定された通称マッカーサー・ラインが撤廃されると,我が国遠洋漁業が本格的に再開した。また,1954年に我が国がコロンボプランに加盟したことにより,我が国の政府ベースの海外協力が開始された。この頃,海外基地を根拠として漁業を行おうとする漁業者が極めて多く,一方我が国の協力を得て漁業開発を行いたいとする海外からの要請も寄せられた。
1960年代の第二次国連海洋法会議を契機として,開発途上国をはじめとする多くの沿岸諸国は,1960年代後半より,自国200海里漁業専管水域び設定等,漁業資源の権利主張を強め,我が国は沿岸国との交渉なしに漁業を行うことが事実上不可能な状況になり,外国船の締め出し,入漁料の徴収高額化に加えて,経済協力,技術協力の要請等の問題に直面し,操業や経営に大きな負担が強いられることになった。
この時期,政府ベースの技術協力についても協力要請が急増し,組織の拡充,強化が必要になってきたため,1962年に開発途上諸国に対する政府間ベースの技術協力面で経済・社会開発に貢献することを目的として「海外技術協力事業団」が設立された。
水産庁は,国際情勢に対応し海外漁業協力を政府主導の「事業団」で実施することを検討したが,緊急な対策を要する国際情勢等を考慮し,1973年度の予算において海外漁場の確保と海外漁業協力とを一体的に推進することとし,関係業界で設立する「公益法人(財団法人)」に助成して民間ベースの海外漁業協力を実施・支援することとした。新法人は,海外漁業協力事業に関する資金の貸付,海外派遣専門家の確保・養成,情報の収集・提供・漁業取締の促進支援等の事業を実施することとし,1973年6月2日農林大臣の承認を受けて,「海外漁業協力財団」が発足した。
また,同年度から,外務省においても,開発途上国が実施する水産関係プロジェクトに対しての無償資金協力が経済及び社会開発に寄与するとともに漁業面における従来からの有効関係の維持・発展に役立ち,極めて有意義なことから,水産無償予算が計上されるとととなった。加えて,1974年には,「海外技術協力事業団」と「海外移住事業団」とを統合して,開発途上諸国の開発に一層効果的かつ積極的に寄与することを目的に政府間ベースの技術協力の実施機関として「国際協力事業団」が設立された。
(2)水産無償資金協力
近年,発展途上国の人口増加と食料供給の問題が懸念されるようになっていることに加え,1994年に国連海洋法条約が発効したことを受け,発展途上国における水産資源の有効利用の重要性は,益々,高まってきている。このような状況の中,EUや米国も発展途上国の漁業を対象とした経済協力を積極的に推進しており,我が国としても漁業面における従来からの友好協力関係の維持・発展を図るため,引き続き,水産無償資金協力を積極的に実施している。
(3)海外漁業協力財団の協力
現在,海外漁業協力財団では,我が国漁船の海外漁場及び安全操業の確保を図るため,個別専門家の派遣,研修生の受入及び各種のプロジェクト方式の技術協力を行うとともに,沿岸国水域への入漁に関連した我が国漁業者の漁業合弁事業等を促進するために必要な資金の融資を行っている。
平成9年度は,24か国から合計142名の研修生を受け入れ,25か国に対し,186名の専門家の派遣を行った。また,南太平洋島嶼国に対する技術者派遣及び漁船や水産関連施設の修理修復に関する巡回技術指導,マダガスカルにおけるエビトロール漁業の混獲魚の有効利用及び魚食普及,インドネシアの農業省海洋漁業調査研究所においてまぐろ延縄漁船乗組員訓練等,各種プロジェクト方式の技術協力を行った。