評価年月日:平成25年4月17日
評価責任者:国別開発協力第三課長 貴島 善子
ザンビア共和国(以下,「ザンビア」)
ルサカ郡病院整備計画
本計画は,ザンビアの首都ルサカ郡の2つのヘルスセンター(マテロ・ヘルスセンター及びチレンジェ・ヘルスセンター)に対し,病棟の新設及び医療機材の整備を行うものである。本件実施により,両ヘルスセンターおける保健・医療サービスを拡充し,両ヘルスセンターを郡病院として格上げすることを目的とする。供与限度額は19億800万円であり,マテロ・ヘルスセンターでは外来棟,中央診療棟,外科・小児科病棟及び受水槽などの関連施設,チレンジェ・ヘルスセンターでは外来棟,中央診療棟及び受水槽などの関連施設を建設し,新設棟と既存棟の一部に必要な医療機材を供与する。
ザンビア政府により,以下の事項が実施される必要がある。
(1)本計画により建設された病棟と供与された医療機材の維持管理を適切かつ継続的に行う。
(2)保健医療サービスの拡充に伴い,必要となる医師や看護師の増員計画や維持管理などの当該病院の運営・管理に係る予算措置を行う。
(3)医療廃棄物及び排水処理を適切に行う。
(1)ザンビアの出生時平均余命は48歳であり,アフリカ地域の平均である54歳に比べると非常に短い。この原因として,国民の約7人に1人がHIVに感染していることや,乳幼児死亡率が1000出生対111(2010年)と世界対象189ヶ国中176位と高いこと,また妊産婦死亡率についても10万出生対591(2010年)と高いこと等が挙げられる。
(2)ザンビア総人口の約15%(約140万人)が集中する首都ルサカ郡において,保健・医療サービスの提供は,高次レベルのサービスを提供する病院がザンビア大学医学部付属教育病院1箇所しかなく,基礎レベルのサービスを提供する34のヘルスセンターとの間の中間レベルの病院がない。このため,ルサカ郡住民は帝王切開や外科手術等の保健・医療サービスへのアクセスが極めて限られている。また,ザンビア大病院の患者の約25%がヘルスセンターから転送される患者で占められており,慢性的に混雑しているため,これらの患者を削減し,混雑を緩和する必要がある。
(3)これに対し,ザンビア政府は国家保健戦略計画(2011-2015)を策定し,ヘルスセンターの機能を拡充して郡病院として格上げし,医療サービスの拡充を図る計画を実施しているが,そのための資金が不足している。
(4)このためザンビア政府は,我が国のこれまでの支援実績を踏まえ,我が国に無償資金協力を要請してきた。
(5)なお,我が国は,ザンビアに対する国別援助方針において,鉱業に過度に依存した経済構造からの脱却を後押しするべく,「産業の活性化」,「経済活動を支える基礎インフラの整備・強化」及び「持続的な経済成長を支える社会基盤の整備」を重点分野と定め,重点分野「持続的な経済成長を支える社会基盤の整備」において保健サービスへのアクセス改善への協力を掲げており,本計画は右重点分野に該当する。
(1)建設資機材は,なるべく堅固な材料,メンテナンスフリーに近い材料,現地で入手可能で修繕が容易な材料を選定し,コストを抑制できるようにした。
(2)本計画の工事工程については,両ヘルスセンターが現在実施している医療サービスに支障を来さない計画とした。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
(1)帝王切開件数:マテロ・ヘルスセンター及びチレンジェ・ヘルスセンターにおいて年間734件の患者の帝王切開手術が可能となる。現在,帝王切開を必要としている患者は全てザンビア大病院に転送されていることから,同病院の帝王切開件数が大幅に減少し,混雑が緩和する。
(2)成人外科病棟への入院患者数:マテロ・ヘルスセンターにおいて外科手術が必要な患者を年間484名受け容れることが出来るようになる。また,現在外科手術が必要な患者は全てザンビア大病院へ転送されていることから,同病院への転送数が減少し,混雑が緩和する。
(1)ザンビア政府からの要請書
(2)JICAの概略設計調査報告書(JICAより入手可能)