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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成25年7月11日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓

1. 案件概要

(1)供与国名

ウズベキスタン共和国

(2)案件名

ナボイ火力発電所近代化計画

(3)目的・事業内容

ウズベキスタン中部ナボイ州の火力発電所において,老朽化した既設設備に替え,高効率の熱併給型コンバインドサイクル・ガスタービンを導入することにより,電力及び熱併給の効率と信頼性の向上を図り,もって持続的な経済発展及び気候変動の緩和に寄与するもの。

ア 主要事業内容

・土木工事
・機器調達
・コンサルティング・サービス

イ 供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
348.77億円 年0.3% 40(10)年 アンタイド

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

ア EIA(環境影響評価)

EIA報告書は2012年2月に国家自然保護委員会により承認済み。

イ 用地取得及び住民移転

本計画は,事業対象地にある送電鉄塔の移設を必要とし,これに伴い,約3.11haの用地取得および23世帯(93人)の非自発的住民移転が発生する。用地取得および住民移転は,同国国内手続き及び簡易住民移転計画に沿って実施される。また,用地取得予定地内には10世帯が不法に建設途中の家屋等を所有していたが,損失資産に対する再取得価格に基づく補償が実施機関から支払われている。

ウ 外部要因リスク:特になし。

2. 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ

ウズベキスタンの最大電力需要は2012年に8,020MWに達しているが,国内施設のピーク対応能力は老朽化のために約7,400MWに留まり,電力供給の信頼性が著しく低下している。特に,電源構成の約9割を占める火力発電所の多くが40~50年以上前の古い設備であり,発電容量は平均で約3割低下している。このため,設備更新による電力供給力確保と信頼性向上が急務となっている。

またウズベキスタンの単位GDP当たりのCO2排出量は世界一高い水準であり,経済・社会システム全体でエネルギー効率改善に取り組むことが急務となっている。既存の火力発電所の平均熱効率は約3割と低水準であり,CO2排出量抑制のため高効率の発電設備の導入が望まれている。

イ 我が国の基本政策との関係

2012年4月に策定した「対ウズベキスタン国別援助方針」においては,経済成長の促進と格差の是正に向けた支援を実施すべく,(1)経済インフラの更新・整備(運輸・エネルギー),(2)市場経済化の促進と経済・産業振興のための人材育成・制度構築支援,(3)社会セクターの再構築支援(農業改革・地域開発,保健医療)を重点分野としている。本件は,エネルギー関連の経済インフラ更新(上記(1))に対応した支援であり,我が国の基本政策に合致する。

(2)効率性

過去の類似案件において,発電所の運転維持管理のための計画的な要員配置及び技術能力向上を図ることが重要であるとの教訓を踏まえ,トレーニング・プログラムの策定及び実施を通じた技術移転をコンサルティング・サービスのTORに含め,運転維持管理体制の強化を図っている。

(3)有効性

熱併給型コンバインドサイクル・ガスタービンの導入により,ウズベキスタンの安定的な電力供給及びエネルギー効率の向上への貢献が期待される。本件の実施後に廃止される予定の発電機2機との比較では,本件実施後,最大出力は270MWから431MWに増加し,年間発電量は2,004GWhから3,171GWhに,年間熱出力は66,000Gcalから1,520,000Gcalに増加する。

また,本件の実施により,天然ガス消費量削減と温室効果ガス排出削減による気候変動緩和効果が期待される(684,150tのCO2排出量削減が見込まれる)。さらに,ウズベキスタンの経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。

3. 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

要請書,これまでの国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。

案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。

なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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