評価年月日:平成26年1月16日
評価責任者:国別開発協力第三課長 貴島 善子
トルコ共和国
ボスポラス海峡横断地下鉄整備計画(II)
2004年度に円借款が供与された,「ボスポラス海峡横断地下鉄整備計画(II)」に対し,資機材価格の高騰等を理由とする事業費の増加に対処するため,追加的に円借款を供与し,ボスポラス海峡(イスタンブールをアジア側と欧州側に分断する海峡)を横断する地下鉄の建設及び既存の鉄道線の改修を行うことにより,イスタンブール市の交通需要に対応し,もって乗客輸送の円滑化による経済社会活動の効率化を図るとともに,燃料消費量の削減による窒素酸化物等の排出削減により環境改善に寄与するもの。
ア 主要事業内容
●土木工事(地下鉄用トンネル建設・既存線改修)
●コンサルティング・サービス
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
429.79億円 | 年0.75% | 40(10)年 | 部分アンタイド |
(注)コンサルタント部分は二国間タイド
ア 本計画は,トルコにおける環境影響評価(EIA)制度の適用範囲外となる1993年2月以前に承認された計画であり,EIAの作成義務はないが,1998年に実施機関がEIAを作成し,環境省の評価を得ている。
イ 必要な約18ヘクタールの用地取得及び101世帯の住民移転は完了している。
ウ 外部要因リスク:特になし。
ア 開発ニーズ
イスタンブール市は,ボスポラス海峡により住宅地区であるアジア側と商業地区である欧州側に分断されており,両地区を結ぶのは現状では2カ所の橋梁及びフェリーのみである。2カ所の橋梁の交通量は平均40万台/日(2012年)に達し,慢性的な交通渋滞が発生しており,更に交通渋滞による大量の排気ガス発出による大気汚染が問題となっている。同市においては今後とも人口増加による交通需要の増大が見込まれ,本計画に対するニーズは大きい。
イ 我が国の基本政策との関係
我が国は「対トルコ共和国国別援助方針」を策定し,普遍的価値観を共有する重要なパートナーとして,戦略的協力関係を発展させていくことが重要であると考え,(1)持続的経済発展の支援,(2)開発パートナーとしての連携強化,を重点分野としている。本計画は(1)に該当するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
本計画により整備される鉄道施設に関しては,実施機関を含めた関係者に対して運営・維持管理にかかる研修を実施してきており,効率的な運営・維持管理が図られる。
本計画の実施により,海峡横断部に地下鉄が開通し,事業完成2年後の2017年には,海峡横断部で新たに3,201千人・キロメートル/日の乗客輸送量が期待できる。これによりボスポラス海峡両岸を結ぶ2つの橋梁の交通渋滞が緩和され,燃料消費量の削減により年間6,715トンの窒素酸化物,18,063トンの一酸化炭素排出量の削減が見込まれる。さらには,トルコの経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。