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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成26年3月13日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓

1 案件概要

(1)供与国名

スリランカ民主社会主義共和国

(2)案件名

ケラニ河新橋建設計画

(3)目的・事業内容

スリランカ・コロンボ市北部を流れるケラニ河に新橋及び高架アクセス道路を建設することにより,ケラニ河周辺地域の交通分散化と慢性的な交通渋滞を改善し,同市における道路輸送の円滑化を図り,これを通じてスリランカの経済成長の促進に寄与するもの。

ア 主要事業内容

  1. 準備工事(既設建造物移設,送電線地下埋設)
  2. 土木工事(主橋梁整備,高架道路整備等)
  3. コンサルティング・サービス

イ 供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
350.20億円 0.1% 40(10)年 STEP(タイド)

コンサルタント部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア EIA(環境影響評価)

(ア)本計画に係るEIA報告書は,2013年10月30日にスリランカ中央環境庁により承認済み。

(イ)汚染等対策:工事中は,建設機械の稼働に伴う粉塵や騒音が予見されるため,散水や車両荷台の被覆,工事機材への消音機材の装着,住居付近での騒音を伴う作業の時間の制限等の対策が取られる。水質汚濁については,河の中に橋脚を建てず,河川への影響を与えない設計であり,また,車両整備場へのオイル・トラップの設置等の対策を講じ,河川への汚水流出を防ぐ計画である。また,本計画で生じる掘削土(約91,000立法メートル)は,すべて盛土に転用される。

(ウ)自然環境面:事業対象地域は国立公園等の影響を受けやすい地域またはその周辺に該当せず,自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。

イ 用地取得及び住民移転

本計画は約1.6ヘクタールの用地取得と395世帯及び54事業主 (計1,797人)の非自発的住民移転を伴い,同国国内法及び住民移転計画に沿って取得が進められる。住民移転計画作成過程で実施された住民協議では,事業概要,補償や支援策,苦情処理メカニズム等について説明され,参加者から,事業の影響範囲やスケジュールに関する質問,非正規居住者に対する移転先(代替住居)の提供に係る要望等が寄せられた。協議全体を通し,事業に対する特段の反対意見は確認されていない。

ウ 外部要因リスク

特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ

スリランカにおいては,国内の旅客・貨物輸送の9割以上を道路輸送が担い,同国の経済社会活動において極めて大きな役割を果たしている。しかし,同国では,堅調な経済成長を背景にして交通需要が著しく増加し,コロンボ市内において交通渋滞の悪化が進んでいる。コロンボ市内と北東方面との間の交通は,同市の北側を流れるケラニ河に架かる3本の橋に集中しており,円滑な交通のボトルネックとなっている。特に,既存の「新ケラニ橋」は,スリランカ第二の都市キャンディーや国際空港,港湾に通じる道路やコロンボ市内を縦断する基幹道路につながる交通の要衝であり,慢性的な渋滞が著しい。更に,2013年11月に,コロンボ市内と国際空港を結ぶコロンボ・カトナヤケ高速道路(CKE)が新ケラニ橋と接続したことから,渋滞が一層悪化している。このため,コロンボ市内の渋滞緩和と円滑な交通を実現するため,新規架橋が喫緊の課題となっている。

イ 我が国の基本政策との関係

我が国の「対スリランカ国別援助方針(2012年6月)」では,重点分野として,「経済成長の促進」を掲げ,そのために必要な運輸インフラ等の整備を重視している。また,対スリランカJICA国別分析ペーパーにおいて,運輸ネットワークの強化をスリランカ支援の重点分野と分析しており,本計画はこれら方針・分析と合致する。

(2)効率性

ア 施工に関し,既存交通を妨げない急速施工等の我が国技術が活用される見込み。

イ 維持管理に関し,技術協力を通じて担当機関である道路開発庁(RDA)の能力向上を図る予定。

(3)有効性

本計画は,コロンボ市北部を流れるケラニ河に新橋及び高架アクセス道路を建設することにより,ケラニ河周辺地域の交通の分散化と迅速化を実現する(2021年(事業完成2年後)目標値として,(ア)年平均の一日当たり交通量を,新設するケラニ河新橋について58,100台,既存の新ケラニ橋について67,900台(2013年実績:92,700台)とし,また,(イ)A01道路とオルゴダワッタ交差点間(約2キロメートル)の所要時間を4.0分(2013年実績:7.7分))ことを目標としている。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

要請書,スリランカ国別評価報告書(2007年度),これまでの国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。

案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。

なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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