評価年月日:平成25年5月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
ミャンマー連邦共和国
貧困削減地方開発計画(フェーズ1)
ミャンマー全国7地域及び7州において、貧困層への裨益効果が高く、また緊急性の高い生活基盤インフラ(道路、電力、給水)の新設・改修を行うことにより、地方部の住民の生活向上を図り、もって地方における開発・貧困削減に寄与する。
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
170億円 | 年0.01% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(ア)環境影響評価:本計画は道路、給水、送電・配電網セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。また、本計画にかかる環境影響評価(EIA)報告書は、EIAに関するミャンマー国内法上、作成は義務付けられていない。
(イ)用地取得及び住民移転:本計画は既存設備の改修事業や既に用地が取得されている場所での新設であり、用地取得及び住民移転は伴わない。
(ウ)外部要因リスク:特になし。
(ア)開発ニーズ
ミャンマーにおいては、都市部と地方部の経済格差が課題の一つであり、例えば同国の貧困層の85%は地方部に居住していると指摘されている(ADB、2012年)。また、ミャンマーのインフラ整備の現状は、他のアセアン諸国と比べて低い水準にとどまっており、特に地方のインフラ整備は遅れている。例えば、地方部における電化率は16%(ADB、2012年)、安全な水にアクセスできない住民は4割に上るとされている(UNDP、2010年)。このような低いインフラ整備水準は地方部における経済活動を妨げ、貧困削減の阻害要因となっており、生活基盤インフラの整備が緊急の課題となっている。
なお、テイン・セイン大統領率いる現政権は、貧困削減を国家方針の重要課題に掲げ、対外借入を含む国際社会からの支援を通じ地方開発を進める意向を表明している。現在策定中の国家開発五カ年計画の中で、地域及び州の開発が最重要政策として採り上げられる予定である。
(イ)我が国の基本政策との関係
本計画は、地方部の開発に生活基盤インフラ整備を通じて貢献することで、地方部の貧困削減に寄与するものであり、2012年4月に見直した我が国の対ミャンマー経済協力方針「国民の生活向上のための支援」及び「持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援」に合致する。
既往の地方開発事業の事後評価等から、運営組織の迅速な整備・人員配置、進捗状況の適切な把握が必要との教訓を得ている。これを踏まえ、コンサルティングサービス開始前に有償勘定技術支援等を行うことにより、プロジェクト及びモニタリングの実施・監理体制の構築を支援する。
本計画の実施により、2012年の実績値と比較して、事業完成2年後の2018年には、対象地域の道路1kmあたりの平均走行時間が4.4分から1.4分に改善される。また、電化世帯数が89,360世帯から196,015世帯に、販売電力量が5,584kWh/月から32,842kWh/月に、給水世帯数が47,762世帯から126,482世帯に、給水量が79,008m3/月から130,444m3/月にそれぞれ大きく増加する。これにより、対象地域に居住する住民の生活環境向上が図られ、貧困削減効果が期待できる。ひいては我が国との二国間関係が増進される。
要請書、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html)、その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。