評価年月日:平成26年1月21日
評価責任者:国別開発協力第三課長 貴島 善子
イラク共和国
港湾整備計画(第二期)
イラク南部のコール・アルズベール港等において,港湾等を整備することにより,港湾機能の回復と効率化を図り,もって同国の経済・社会復興に寄与するもの。
ア 主要事業内容
●土木工事(浚渫,沈船除去,岸壁延長工事等)
●資機材調達
●コンサルティング・サービス
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
391.18億円 | 0.20%(土木工事部分) 0.65%(土木工事部分以外) |
40(10)年 | 日本タイド(本邦技術活用条件(STEP))(土木工事部分) 一般アンタイド(土木工事部分以外) |
(注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。
ア EIA(環境影響評価): 国立公園等の影響を受けやすい地域またはその周辺に該当せず,自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される。イラク国内法上,本計画に関する環境影響評価(EIA)報告書の作成は義務づけられていない。
イ 土地収用及び住民移転: 用地取得や住民移転は伴わない。
ウ 外部要因リスク: 対象地域の治安情勢は改善傾向にあるほか,事業実施に当たって安全確保に最大限の措置を講ずる。
ア 開発ニーズ
イラクにおいて,現在実質的に機能している港湾施設は,国際商港のウンム・カスル港と工業港のコール・アルズベール港であるが,両港は長年の維持管理不足や土砂の堆積と沈船等のため,船舶航行に支障を来している。また,港湾機能が低く,荷役機材の不足・機能不足によりバースでのコンテナの荷役に相当の時間を要するため,年間取扱貨物量の増大に十分に対応できておらず,イラクの海の玄関口である港湾における円滑な流通を阻害している。今後も貨物量は増加し,現状の港湾施設の取扱能力約13.9百万トンに対し,2018年には約27.3百万トンを越える貨物量が見込まれている。
これらの状況を改善するため,2007年1月,ウンム・カスル港の港湾施設の整備を目的とした円借款「港湾整備計画」に係る交換公文(E/N)に署名した。本件は,これに続く港湾整備案件として,コール・アルズベール港を中心として港湾施設・航路の整備,管理運営強化を行うことにより,港湾機能の回復と効率化を図るものである。
イ 我が国の基本政策との関係
我が国の対イラクODAにおける重点分野として,(1)経済成長のための産業の振興と多角化,(2)経済基礎インフラの強化,(3)生活基盤の整備を挙げている。本計画は,(2)に該当する。
浚渫技術や港湾管理運営能力向上等の技術協力のほか,コンサルタントやコントラクターによる研修を併せて実施することにより,円借款の開発効果を一層増大させることを目指す。
土砂や沈船が除去されることによりこれまで入港できなかった規模の大きな船舶が入港できるようになるほか,港湾施設を回復することにより増大する貨物取扱量に対応できるようになり,物流の円滑化につながることが期待される(完成2年後(2021年)見込み(コール・アルズベール港):入港船舶の平均載荷重量3,300トン → 5,000トン,年間取扱貨物量280万トン → 760万トン)。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。