評価年月日:平成25年11月11日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
インド
インド工科大学ハイデラバード校整備計画(フェーズ2)
インド南部アンドラ・プラデシュ州ハイデラバード市郊外において,ビジネス・インキュベーションセンター,国際会議場,中央図書館,総合研究センター及び学科棟の建設等,インド工科大学ハイデラバード校(IITH)の施設整備を行うもの。
ア 主要事業内容
1. ビジネス・インキュベーションセンター,国際会議場,中央図書館,総合研究センター及び学科棟等の建設
2. 対象施設に係る関連備品類の調達・据え付け
3. 研究機材の調達・据え付け
4. コンサルティング・サービス
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
177.03億円 | 年1.40% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(注)コンサルタント部分の金利は0.01%を適用。
ア EIA(環境影響評価)
本計画は,「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(2002年4月公布)」に掲げるカテゴリBに該当する。インド国内法上もEIA報告書の作成が義務付けられており,2012年8月にアンドラ・プラデシュ州環境影響評価庁の承認済。(なお,国際協力機構ガイドラインではなく,国際協力銀行ガイドラインを用いているのは,本件のフェーズ1の審査が国際協力銀行ガイドラインに基づいて行われているため,フェーズ2においても同様の対応としたもの。)
イ 用地取得及び住民移転
本計画の実施予定地55.7エーカーのうち54.3エーカーは取得済,残りの1.4エーカーの民有地は同州の手続きに従い建設開始時期までに取得される予定。なお,住民移転は伴わない見込みである。
ウ 外部要因リスク
特段なし。
ア 開発ニーズ
インドの持続的な成長のためには,特に技術革新が求められる製造業において,理工学系の分野で十分な知識とスキルをもった優秀な人材を育成する必要がある。
このため,インド政府は第11次5ヵ年計画において,高等教育機関の量的な拡充を図っているが,新設された教育機関における研究・教育水準の向上が課題となっており,2007年にインド政府は我が国に対し,新設工科大学8校のうち1校に対する支援を要請した。2008年10月の日印首脳会談においてIITHへの協力が合意され,これまでに産官学によるコンソーシアムの設立,学生・教師の本邦招へいに加え,ODAを含む様々な支援ツールを活用した産官学のオールジャパンによる協力が開始されている。
IITHの学生数は開校後20年となる2028年に学生24,000名,教員及び研究職2,500名,その他職員など合計31,000名が在籍することが見込まれており,国内外の教員の招へいや優秀な学生の確保という観点からもIITHの施設整備が急務となっている。2012年度に決定したフェーズ1に続き,本件支援を実施することは,高等教育の充実を目指すインドの開発政策とも高い整合性を有する。
イ 我が国の基本政策との関係
2006年6月に策定された「国別援助計画」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(a)経済成長の促進(「経済成長を通じた貧困削減」を追求するためのインフラの整備等),(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大(強固な二国間関係の構築を念頭)を掲げている。本計画は,産業人材育成への支援という観点及び,本計画と関連する技術協力との相乗効果による人材育成・交流拡大という観点から,上記(a)(c)に合致する。
ア IITH支援コンソーシアムの枠組みのもと,我が国産官学の参画を得た支援が行われ,効果を高めている。支援の重点分野として,5つの分野及び協力大学が日印で合意されており,研究協力の枠組みの検討,共同研究,学術交流等の協力が進められている。
イ 本計画で整備する4施設のデザインは,円借款付帯プロジェクトにより東京大学が行っている。これまでの成果が施設整備に反映されるよう,IITH及びコンサルタントとの連携が図られる。
ウ 本計画と関連する技術協力が複数実施されており,実施機関の運営体制強化,施設の活用方針具体化を通じて他の支援との相乗効果の発現が図られる。
本計画の実施により,インドの工学・科学技術分野における人材育成,産業振興及び競争力強化,並びに日本とIITHの交流促進が図られる。運用・効果指標としては,学生数(2012年1,065→完成2年後7,500),教官・研究者数(94→750),開設コース数(170→350),受託・共同研究プロジェクト数(年間31→200)等を設定している。
インド政府要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/guideline/guideline.html),その他国際協力機構より提出された資料,インド国別評価(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetsu/indo.html)。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。