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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成25年6月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正

1. 案件名

1-1. 供与国名

ツバル

1-2. 案件名

貨物旅客兼用船建造計画

1-3. 目的・事業内容

本計画は,ツバル国内輸送及びフィジーとの国際輸送のための貨物旅客兼用船の建造及び関連機材の調達により,ツバル国民の生活を支える国内及び国外の海上輸送を安定的に維持するものである。供与限度額は,15億4,400万円であり,貨物旅客兼用船1隻の建造,関連機材(離島における荷役のための搭載艇等)の調達を行う。

1-4. 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

以下の事項がツバル政府により実施される必要がある。

(1)維持管理・運行のための予算及び人員の確保
(2)諸事務手続,免税措置の実施及び各種手数料の負担
(3)大型部品を収容する部品倉庫の確保

2. 無償資金協力の必要性

2-1. 必要性

(1)ツバルは南太平洋に約700kmにわたる輪を描いて点在する9つの珊瑚礁の島から構成されている。これら9島間の国内輸送及び隣国フィジーとの海外輸送は,ツバル政府が所有し運航する2隻の貨客船「ニバンガII号(1988年英国が供与。総トン数1,043トン,全長58m,乗客乗員定員209名)」と「マヌ・フォラウ号(2002年我が国の無償資金協力により供与。総トン数582トン,全長46.50m,乗客乗員定員182名)」に大きく依存している。

国内の航空輸送はなく,人・物資の移動は海上輸送が唯一の手段である。国外の航空輸送は,エア・パシフィック航空によりツバルの首都フナフチとフィジーの首都スバ間の航空便が週2便運航されているが,機体の大きさ(約40名乗り)から乗客数は限られ,貨物の積載量も非常に少ない。また,ツバル国民にとって航空運賃は高額であり,低運賃のツバル船舶による国外海上輸送への需要は高い。

(2)既存船ニバンガII号は,船体鋼板の腐食が進み,船底破口,機関・搭載機器の故障等により頻繁に出港遅延・運休するなど,安全な定期運航が困難な状況であり,また点検修理にかかる維持管理費が大きな課題となっている。さらに,ニバンガII号の老朽化が進み運航できなくなった場合,2002年に我が国が無償資金協力により供与したマヌ・フォラウ号1隻のみでは,ツバルの人及び物資の輸送に大きな支障を来すことが懸念される。国内外の人と物の輸送を海運に大きく依存するツバルにとって,安全かつ信頼できる貨客船2隻の確保は不可欠であり,既存貨客船ニバンガII号に代わる新船1隻をもって,ツバルの島嶼間貨客輸送を強化する必要がある。なお,債務持続性等の観点から,円借款での実施は難しい。

2-2. 効率性

(1)要請書では,貨客船1隻に加え,陸上部品倉庫が要請内容に含まれていたが,2007年度無償資金協力として「フナフチ港改善計画」を別途実施し,一定の成果が見込まれるため,同倉庫は本案件に含まないこととした。また,要請書で要請内容に含まれていた船舶保守整備等指導のための技術者派遣についても,太平洋地域の海運セクターを巡回指導する海事専門家の配置を検討中であり,右専門家により本案件の要請内容は満たされるため,本案件には含まないこととした。

(2)フィジーへの国際航海の際は,海上人命安全条約(SOLAS)等の国際条約により,乗船者数に応じた厳しい安全基準が適用されるが,ツバル国内の航海は国際条約適用外であるため,緩和された安全基準が適用される。このため,本案件では,国際航海における旅客定員数を少なく設定することにより,国際条約で要求される安全設備の水準を緩和することとした。

(3)必要な輸送能力等の基本要件を満たした上で,運航費用及び維持管理費用を最小限にできる船舶規摸を検討した結果,本案件の建造船の規摸(総トン数1,270トン,全長60.50m,乗船定員429人(国内航海時)/320人(国際航海時))を決定した。

(4)予備部品を一定の頻度で定期的に交換する予防的保守管理ポリシー(Preventive Maintenance Policy : PMP)の導入により,船舶の長寿命化を図る。

2-3. 有効性

(1)本件の実施により,以下のような成果が期待される。

(ア)輸送可能な旅客数の増加により,年間旅客数が約4,000人(過去3年平均)から4,300人(供与後の3年平均)に増加する。

(イ)老朽化した既存船では,故障の頻発により修理・維持管理費用が高額になっていたが,新規船舶の供与により故障が少なくなるため,維持管理費用が432,000豪ドル/年(2012年)から182,000豪ドル/年(供与後の3年平均)に削減される。また,故障による年間停泊日数が約10日/年(過去3年平均)から1日以下(供与後の3年平均)に削減される。

(ウ)岸壁がない離島においては沖合に貨客船を停泊させ,同船と陸岸の間を小型ボートで往復して荷役を行うが,右荷役に使用する搭載艇を従来より大型化することにより,離島での荷役必要時間が1回当たり平均6時間(2012年)から4.5時間(2019年)に減少する。

(2)ツバルは国際的な場において,我が国の立場や国際機関の選挙での立候補を一貫して支持するなど,我が国にとって重要なパートナーである。また,我が国は,2012年5月の第6回太平洋・島サミットにおいて,「自然災害への対応」,「環境・気候変動」,「持続可能な開発と人間の安全保障」,「人的交流」,「海洋問題」を中心に支援を実施していくことを表明するとともに,我が国の対ツバル国別援助方針で「脆弱性の克服」を重点分野の一つとしていることから,本件は我が国の方針に合致した支援として,同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。

3. 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)ツバル政府からの要請書

(2)JICAの事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)

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