評価年月日:平成26年2月13日
評価責任者:国別開発協力第一課長 宮下 匡之
サモア独立国
都市水道改善計画
本計画は,現在原水のまま給水されているサモアの首都アピア内の3給水区において,取水施設,浄水施設及び配水施設の整備,水道メーターの設置等を行うことにより,浄水処理された安全な水を安定供給し,同給水区の生活・衛生状況を改善することを目的としている。供与限度額は18億3,100万円である。
保守担当の職員が十分な技術を有することや,適切な運営管理と定期的な整備点検のための予算的措置を毎年講じること等,本事業実施後の浄水場等の適正な運営維持管理体制を確立すること。
ア サモア水道公社は,サモア国民全体の80%に対して,上水道サービスを提供している。首都アピアの上水道事業は,未処理原水給水区の存在(10給水区の内の6給水区),乾期における水源水量の減少,降雨時における濁水の発生,無収水率が平均50%以上と高い(本プロジェクト対象地域では60~80%)などの課題を抱えている。そこで,サモア政府は国家開発戦略(2012年~2016年)の中で,水セクターに係る重点政策を発表し,国民の健康と水に起因する疾患の罹患率を抑制するために,衛生や下水システムを改善すると同様に,安全で安心な水へのアクセスの向上が不可欠であるとして,給水に係る指標を設定した。
イ 日本は水セクターへの支援として,沖縄県宮古島市による草の根技術協力「サモア水道事業運営(宮古島モデル)支援協力」(2010~2013年)によって緩速ろ過(生物浄化)法による浄水処理の改善や無収水対策等の支援を行ってきたが,サモアの政策目標を達成するためには,大幅な設備整備が必要である。なお,債務持続性等の観点から,円借款での実施は難しい。
ア 本計画で整備する取水施設,浄水施設及び配水施設については,現地調査の結果,既存施設の改修を行うか,他の地区から浄水を配分することとするかを判断した。配水に関し,改修に適用する管材は,サイクロンなどによる損傷を受けにくいダクタイル鋳鉄管とした。
イ 浄水処理方法については,ろ過速度,施設用地面積等に関する比較検討の結果,沖縄県宮古島市による技術指導が行われてきた生物浄化(緩速ろ過)法が妥当と判断した。
ウ サモア水道公社は,管内の使用水圧の最大値を60mとしており,それを超える地域がある場合,通常,減圧タンクもしくは減圧弁が適用される。本計画では,維持管理が容易な減圧タンクを選定した。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア 浄水場,送水ポンプ場,配水池等の上水道システムを新設・改修することにより,プロジェクト対象地域の住民に対し,浄水処理された安全で安心な水を提供できる。浄水給水能力が、0m3/日から、4,440m3/日に改善される。
イ 本件実施により,同地区の衛生状況が改善される。
ウ サモアは国際場裏で我が国の立場を支持する大洋州地域における重要なパートナーである。また,我が国は2012年5月の第6回太平洋・島サミットにおいて,「東日本大震災の経験を踏まえた防災協力」,「環境・気候変動」,「持続可能な開発と人間の安全保障」,「人的交流」,「海洋問題」の5つの柱を中心に支援を実施していくことを表明しており,本件支援は同支援策の一環として,同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。
(1)サモア政府からの要請書
(2)JICAの準備調査報告書