評価年月日:平成25年6月12日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
ミクロネシア連邦
国内海上輸送能力向上計画
本計画は,貨客船(1隻)の整備及び既存船舶の保守管理に必要な機材を供与するものである。本事業により,供与する貨客船と既存船の2隻体制により運航を行うことで国内需要に応え,安全で安定的な海上輸送を確保するとともに,国内海上輸送サービスの改善を図り、もって同国の社会経済発展に寄与することを目的とする。供与限度額は11億1,000万円である。
以下の事項がミクロネシア連邦政府により実施される必要がある。
本計画により建造される貨客船(1隻)と既存船(1隻)に関して,適切な運営及び維持管理に必要な予算の継続的に確保されること,維持管理を担当する職員が十分な技術を有し,船舶の運航に必要な人員が確保されること。
ア ミクロネシア連邦は607の島及び環礁が東西2,550kmに渡って散在している島嶼国である。人口の約17%が離島に居住しており,島々を結ぶ交通手段として人の移動や物資の輸送,保健医療サービスの提供等に海上交通が不可欠なものとなっている。
イ 一方で,同国において現在継続的に運行している連絡船は,1996年に我が国の無償資金協力により建造された1隻のみである。国内需要が大きい中,当該既存船1隻で国内の海上輸送を支えている状況のため,旅客定員を超える需要が発生し,また過酷な運行スケジュールにより適正な維持管理ができず,重大な故障の発生が懸念される状態となっており、新規貨客船が必要とされている。なお,債務持続性等の観点から,円借款での実施は難しい。
ア 既存船の旅客及び貨物の輸送実績を検討し,計画船に必要な輸送能力を算定し,無駄のない計画船の規模を決定した。
イ 計画船及び既存船において,故障してから開放修理するのではなく,故障していなくとも定期的に開放点検する予防的保守管理体制を構築し,故障の減少,機器の長寿命化を期することとした。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア 2隻体制での定期運航により、国内の海上輸送に対する需要を満たした安全な運航が確保され、安定的な海上輸送の確保により生活物資が定期的に輸送される。また、都市部と離島部を往来する同国国民の利便性が向上する。
イ 新規貨客船の整備及び予防的保守管理の導入により、定期運行延日数が増加(232日/年(2011年)→311日/年(2019年目標))するとともに、寄港頻度が増加(年間275回(2011年)→年間358回(2019年目標))し、故障による年間停船日数も減少(約7日/年(2011年)→1日以下/年(2019年目標))する。
ウ ミクロネシアは国際選挙・決議等で我が国の立場を支持する大洋州地域における重要なパートナーである。また,我が国は2012年5月の第6回太平洋・島サミットにおいて,「東日本大震災の経験を踏まえた防災対策」,「環境・気候変動」,「持続可能な開発と人間の安全保障」「人的交流」「海洋問題」の5つの柱を中心に支援を実施していくことを表明しており,本件支援は同支援策の一環として,同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。
(1)ミクロネシア連邦政府からの要請書
(2)JICAの準備調査報告書