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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成25年2月13日
評価責任者:国別開発協力第三課長 貴島 善子

1.案件名

(1)供与国名

モーリシャス共和国

(2)案件名

気象レーダーシステム整備計画

(3)目的・事業内容

本計画は、モーリシャス共和国に気象レーダーシステムを整備するものである。サイクロンの多発地帯である南西インド洋に位置する同国において、各種気象災害の監視能力強化及び気象予警報の精度・能力の向上を図り、被害の軽減に寄与することを目的とする。供与限度額は10億7,900万円である。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

以下の事項がモーリシャス共和国政府により実施される必要がある。

ア 本計画により整備された気象レーダーシステムの維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

イ 本計画開始前の本計画区域の障害物の除去、及び工事中の騒音、廃棄物への対応を含む環境社会配慮に関する適切な対応を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

(1)必要性

ア モーリシャスは、サイクロンの多発地帯である南西インド洋に位置しており、サイクロンによる暴風雨、高潮、洪水、地すべりといった自然災害により例年大きな被害を受けている。同地域のサイクロン発生数は、1960年代の平均2.4個/年に対し、2000年代の平均5.1個/年と、40年間で約2倍に増加している。また、近年、発生するサイクロンが大型化しており、近隣のマダガスカル及びフランス領レユニオンと合わせた過去10年の被害は死者数932人、被災者数約280万人、被害額約6.55億ドルとなっている。一方で、サイクロンの監視に重要な役割を果たしていた同国のアナログ気象レーダーシステムが老朽化により2005年に完全に停止し、早期の警戒・監視が困難な状況となっている。

イ 同国政府が策定した気候変動行動計画(1998年)において、気候変動に対応するためのデータ収集やモニタリング、能力や技術の開発、住民啓発等の必要性が記載されている。また、同分野のモーリシャス戦略(2005年)では、サイクロン等の気象災害に対する早期警戒能力の強化や国の災害管理体制強化の必要性が明記されている。

ウ 地球温暖化による気候変動に対して脆弱な同国では、気象観測・予報体制、防災体制の構築が急務であり、サイクロン監視に重要な気象レーダー設備を整備する計画を策定し、同計画の実施に必要な資金につき、モーリシャス共和国政府は、我が国政府に対し無償資金協力を要請した。

(2)効率性

ア サイクロン、落雷等の自然災害が発生した場合においても継続して気象観測業務が行うことができるよう、安定性を考慮した上で、経済性、施工等の観点からも最適な内容を選択し、本計画の効率性を高めている。

イ 本計画の完成後、近隣のフランス領レユニオンの気象局と気象レーダー画像の交換を行うこととし、サイクロンのより的確な監視のため、地域での連携強化を図ることとした。

(3)有効性

本件の実施により、以下のような成果が期待される。

ア 広範囲の気象データ(風速:半径200km、降水量:半径450km)が観測可能となる。

イ 観測データを利用したより精緻な気象予測(サイクロンの予想経路、大雨情報等)が可能となり、TV等マスメディアを通じた国民への適時適切な情報提供が可能となる。

ウ 迅速な避難命令の発令が可能となり、防災関連組織による災害対策や避難活動の迅速な開始によって、自然災害による被害の軽減が期待される。また、観光産業や水産業等の従事者へ正確な気象情報を提供することができ、災害軽減策が適切にとられることにより、経済損失が低減される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)モーリシャス共和国政府からの要請書

(2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)

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