評価年月日:平成25年2月26日
評価責任者:国別開発協力第三課長 貴島 善子
モーリタニア・イスラム共和国
ヌアディブ漁港拡張整備計画
本計画は,モーリタニアの主要漁港であるヌアディブ漁港において,埠頭(岸壁),係留桟橋,護岸の整備及び泊地の浚渫拡張を行うことにより,同漁港の混雑緩和を図り,モーリタニアの主要産業である漁業の発展に寄与するもの。供与限度額は,11.17億円。
以下の事項が,モーリタニア政府により実施される必要がある。
(1)本計画により整備される漁港施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)必要な人的手当及び予算措置を行うこと。
(1)モーリタニアの水産業は外貨収入の約11%,GDPの約7.5%を占める重要な産業であり,中でも零細漁業は,同国の貧困削減と経済開発の観点から重要な位置を占めている。このため,同国の「貧困削減戦略文書フェーズIII(PRSP2011~2015)」では,水産業を含む「貧困層の経済成長」が重点分野とされ,ヌアディブ漁港の拡張が同分野の優先事業とされている他,「水産開発戦略(2011~2015)」においても,「水産分野の社会経済効果・貢献への加速」が重点分野とされ,ヌアディブ漁港を含むインフラ整備が優先課題とされている。
(2)同国の水産業の二大拠点は北部のヌアディブと中部のヌアクショットであり,本計画の建設サイトとなるヌアディブの零細漁業の拠点であるヌアディブ漁港においては,零細漁船の急激な増加により,港の収容能力を超える漁船が利用することとなったため,(1)係留用桟橋の混雑が著しく,係留水域からはみ出したピローグ漁船(船長14m以下の零細漁船)が桟橋と桟橋の間の操船水域にも係留され,ピローグ漁船の安全かつ効率的な出漁準備や円滑な出港ができない,(2)沿岸漁船に適した係留施設がないことから,荷捌き場前面の水揚桟橋を沿岸漁船の係留施設としており,沿岸漁船及びピローグ船の水揚げに支障を来している,等の問題が発生している。
(3)このため,同国政府は,同港の機能拡充を行うことにより,経済開発と貧困削減に重要な役割を果たす零細・沿岸漁業の持続的な発展を目指したいとして,ヌアディブ漁港の拡張整備を我が国に要請してきたものである。
(1)整備を要請された施設の中から,緊急に措置が必要な施設及び我が国の技術を必要とする施設のみを本無償資金協力の対象とした。
(1)ピローグ漁船用の係留桟橋の増設により,係留可能隻数が増加(728隻(2012)→1,081隻(2018))し,係留桟橋の混雑率が緩和(145%(2012)→100%(2018))されることで,ピローグ漁船の係留・漁民の出漁準備等の作業の効率性・安全性が向上し,ヌアディブ漁港で働く零細漁民の労働環境が改善される。
(2)既存係留桟橋の混雑の緩和により,係留時等の漁船接触による船体破損の危険を減らすことができ,船体修理費用の軽減や修理に伴う漁労機会喪失の軽減が図られる。
(3)沿岸漁船用の専用埠頭の整備(沿岸漁船の係留隻数:0隻(2012)→43隻(2018))により,異なる種類の漁船が係留施設を混用している状況が改善され,沿岸漁船の水揚・係留・出漁準備作業の効率性・安全性が向上するとともに,沿岸漁船の水揚待ち時間や水揚時間が短縮されることにより,より鮮度の高い漁獲物を出荷することが可能となる。
(4)本事業で整備する係留桟橋及び埠頭の後背地には,今後,先方政府の自助努力で,漁具倉庫や製氷施設,修理工房等が整備される計画であり,漁民相手の漁具の販売や飲食関連産業の進出も見込まれることから,これら関連産業における雇用創出が期待される。
(1)モーリタニア政府からの要請書
(2)JICA事業化調査報告書