評価年月日:平成25年4月17日
評価責任者:国別開発協力第三課長 貴島 善子
ケニア共和国
バリンゴ郡村落給水計画
本計画は,ケニア共和国西部のバリンゴ郡において深井戸給水施設を90箇所建設し,関連機材を供与するとともに,維持管理に関する啓発活動を行うものである。同国の中でも特に水へのアクセスが極めて悪いバリンゴ地域において深井戸給水施設の建設を行い,安全な飲料水を安定的に供給することを目的とする。供与限度額は10億4,200万円である。
以下の事項がケニア共和国政府により実施される必要がある。
ア 本計画により整備された給水施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
イ 活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。
ア ケニア政府は2008年に長期開発計画である「Vision2030」を策定し,生活水準の向上,国際的な競争力及び経済成長を2030年までに達成することを目標としている。同計画では,給水・衛生分野において2030年までにすべての国民が安全な水へのアクセスを確保し衛生状況を改善することを目標とし,未利用の表流水および地下水の利用拡大と,効率の良い水資源管理の必要性が示されている。
イ ケニア西部のバリンゴ郡は,乾燥・半乾燥地域に属し,安全な飲料水が供給されているのは対象地域約39万人中約10万人で,給水率は約24%であり,給水率の低いケニアの中でも特に低い地域である。
ウ 同地域では未だに不衛生な溜め池や湧水を水源としているため,特に乾期には水量が不足し,水質が悪化することから,水因性疾患である下痢やチフス等の発生も問題となっている。また,村落から水源までの距離が遠く,水汲み労働が住民の大きな負担となっている。
エ 給水状況の悪さは地域開発の阻害要因となっていることから,安全な水の安定的な供給は同地域における緊急の課題となっている。
ア 計画給水人口の推定を行うとともに,水の困窮度等の社会条件調査及び電気探査や試掘等の自然条件調査の結果を踏まえ,対象村落の絞り込みを行った。また,必要な給水量や電力へのアクセス状況等を踏まえて,動力方式は,商用電力,ソーラーシステム及び発電機の中から適切なものを選択することとした。
イ 施設の整備と併せて技術支援(ソフトコンポーネント)を実施することにより,住民による自立的な運営・維持管理能力の向上,県水事務所による住民支援体制の強化が図られるよう計画した。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア バリンゴ郡において,給水人口が98,000人(2011年)から157,580人(2015年)となり,約6万人増加する。
イ 安全で衛生的な飲料水が安定的に供給されることにより,水因性疾患(下痢,チフス等)発生件数の減少に寄与する。
ウ 水汲み距離の縮減により,女性や子供の大きな負担となっている水汲み労働が軽減される。
(1)ケニア共和国政府からの要請書
(2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)