1　案件名

1-1　供与国名

インド

1-2　案件名

チェンナイ小児病院改善計画

1-3　目的・事業内容

本件計画は，タミル・ナド州を中心とするインド南部における保健・医療サービスの質の向上と小児の健康状態改善，ならびに保健・医療教育環境の改善を目的として，同州の小児医療最高レベルの病院であるチェンナイ小児病院の敷地内に，新たに小児総合外来病棟を建設し，必要な医療機器を整備するもの。

供与限度額は14億9,500万円。

1-4　環境社会配慮，外部要因リスクなど留意すべき点

特になし。

2　無償資金協力の必要性

2-1　必要性

（1）インドにおいては，公的な保健サービスの整備が不十分であることから，多くの貧困層が劣悪な保健環境下にある。インド政府はこうした状況を改善するために保健・医療分野への公的支出の増加に努めているものの，その大部分は保健指標の悪い州に集中的に配分せざるを得ないなど，全ての州に対して十分な予算が行きわたっていない。さらに，現在のインド政府の保健・医療セクター予算は，農村部の第一次・第二次医療システムの改善を目的としており，都市部の公的医療サービスの向上に十分な予算が充てられていない状況である。

（2）チェンナイ小児病院は，南インドにおける小児医療トップレファラル（第三次医療）病院としての機能を有し，タミル・ナド州のみならず近隣州からも患者を受け入れているほか，チェンナイ市内の貧困層に無料の第1次・第2次レベル医療サービスを提供している。しかしながら，現在，同病院の診療機能は各棟に分散され，特に外来患者の移動距離が長く非効率な構造となっているとともに，当該移動患者と病院来訪者が交錯することによる院内感染の危険性がある。さらに，同病院はマドラス医科大学付属病院としての教育機能も有しているが，現在の構造は医療従事者が外来部門で教育・研修を受けるのに不向きとなっている。したがって，外来棟機能を強化することにより，外来患者が迅速に必要な検査を受けるための診療体制の整備と教育機能の強化が急務となっている。

（3）タミル・ナド州の州都チェンナイは近年日本企業の進出が著しい地域であり，2013年5月のシン印首相訪日時の共同声明においてもチェンナイ・バンガロールを中心とした南部地域の総合開発への協力が言及されるなど，同州の投資環境整備は二国間関係において重要な位置を占めている。チェンナイ小児病院は，チェンナイ市の二大ターミナルの一つであるエグモア駅の正面に位置しており，視認性が極めて高く，支援の高い広報効果も期待できる。地域の投資環境整備につながり，ニーズも高い本計画の実施は，我が国が，経済・社会双方の分野で，タミル・ナド州と包括的な関係強化を図っていくことを広くアピールするものであり，外交上の効果が高い。

（4）我が国の対インド支援において，インドの「貧困削減」を支援する観点から，基礎的社会サービスの向上（保健・衛生）を重点支援分野の一つとしており，本計画はこれに合致する。

2-2　効率性

対象病院は，南インド地域の小児医療最高レベルの病院として，タミル・ナド州のみならず，近隣州の医療従事者への高度専門医療のトレーニングも行っていることから，本計画による保健・医療分野の教育機能の向上効果は，広く地域全体での保健・医療サービスの質の向上及び小児の健康状態改善をもたらすものであり，支援の効率性は高い。

また，持続的・効率的な運用と維持管理のために，機材の選定にあたっては，現地でメンテナンス及び修理が可能な機材の選定を優先的に検討する。

2-3　有効性

本件の実施により，以下のような成果が期待される。

（1）チェンナイ小児病院における年間超音波検査数が，2011年～2012年平均値の18,728件から，2019年には20,600件に増加することが期待される。同様に，年間外来X線撮影数が，2011年～2012年平均値の37,088件から，2019年には40,800件に増加することが期待される。

（2）外来診療における患者動線の短縮，待ち時間の減少等，同病院の外来診療サービスの提供能力が向上し，患者及び患者家族の負担減少，医療従事者のモチベーション向上等を通じて，タミル・ナド州及びインド南部における保健・医療サービスの質の向上並びに小児の健康状態改善に寄与する。

（3）診療活動を通じた医療従事者の現場研修（OJT）や，病院内での指導・セミナー等を行うための教育環境が改善され，保健・医療分野の教育機能が向上する。

3　事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

（1）インド政府からの要請書

（2）JICAの協力準備調査報告書（JICAを通じて入手可能）

（3）インド国別評価報告書