評価年月日:平成25年5月9日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
カンボジア王国
コンポンチャム及びバッタンバン上水道拡張計画
コンポンチャム市及びバッタンバン市の上水道施設(取水施設,導水管,浄水場,送水管,配水管網等)の敷設,施設の運転・維持・管理に必要な機材(水質分析機器,給水管接続用資機材等)の調達,及び施設の運転・維持・管理に関する研修等を行い,安全な水へのアクセス率の向上と住民の生活環境の向上に寄与することを目的としており,供与限度額は33.55億円である。
工事中の大気汚染,騒音の抑制への配慮,施設運転開始後における排水処理施設での適切な処理による水質汚濁の最小限化など,当国の基準に準拠した形で各種緩和策を実施する。
外部要因リスクに関しては,バッタンバン市の水源となる河川において10~20年の確率で発生する渇水時に年に数日程度の取水制限が発生するおそれがある。また,上流部での取水が増加した場合に本上水施設での取水可能量が減少するため,カンボジア政府により河川が適切に管理される必要がある。
(1)20年にわたる内戦中に極度に悪化した上水道施設の改善のため,現在に至るまで我が国及び他ドナーの支援により様々な支援が行われた。特に,プノンペン都の給水サービスについては著しい改善が見られており,24時間給水の実現,給水率90%,無収水率6%(2010年時点)等が達成されている。他方,地方都市の水道事業者については,これまで我が国技術協力等により一定レベルでの上水道施設の運転は可能となっているものの,財務体質が脆弱で,中長期的な設備の整備・更新計画も策定されていない状況にあり,給水サービスの質は依然として低く,安全な飲料水へのアクセス率は33%(2008年時点)に留まっている。
(2)これに対し,カンボジア政府は「国家戦略開発計画」において2015年までに都市部人口の80%に対して安全な水へのアクセスを確保することを目標としている。また,上水道セクターに係る国家方針である「上水と衛生に関する国家政策」において,カンボジア国民が安全な水の供給を受け,衛生施設を有し,安全で衛生的かつ環境に適応した生活環境を享受することを目標として,水道セクターの整備に取り組んでいる。
(3)本事業の対象都市であるバッタンバン市とコンポンチャム市は,それぞれ人口規模第2位,第4位の重要都市でありながら,給水率については,浄水場の供給力不足によりそれぞれ約31%,33%に留まっており,施設整備が急務となっている。
(1)施設の概略設計に当たっては,カンボジアで広く適用され,プノンペン水道公社が採用している基準及び実施中の無償資金協力事業での設計基準をベースに,日本の「水道施設設計指針」(財団法人日本水道協会)を参考とした。
(2)機材調達は,カンボジアの要請内容と現状の機材保有状況を勘案し,本プロジェクトで建設される施設の運転維持管理に最低限必要と思われる機材について調達する。
(3)貧困層における給水率向上に資するため,貧困世帯に対する給水管接続用資機材を調達する。
(4)施工体制は,現地建設業者の能力,規模,実績を勘案の上,日本の請負業者の下で現地建設業者を十分活用する。
(5)施工工程は,雨期期間中の河川水位上昇を考慮し,河川に設置する取水施設を乾期に建設可能な作業工程となるように策定する。
(1)一日あたりの平均給水量及び給水人口が増加し(コンポンチャム市の日平均給水量:5,155m3/日(2011年) → 13,500m3/日(2019年),同給水人口:21,600人(2011年) → 58,700人(2019年),バッタンバン市の日平均給水量:8,132m3/日(2011年) → 27,518m3/日(2019年),同給水人口:45,400人(2011年) → 126,700人(2019年)),給水率がそれぞれ84.8%に向上する。
(2)配水管内の適正な給水圧力が維持されることにより,給水栓からの水量・水圧不足が改善される。
(3)給水率の増加により,公衆衛生環境の改善による水因性疾患数の減少,生活用水確保にかかる労力の減少による女性の就業及び子供の就学の促進が期待される。
(1)カンボジア王国政府からの要請書
(2)JICAの準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)