評価年月日:平成25年5月15日
評価責任者:国別開発協力第二課アフガニスタン支援室長 原 圭一
アフガニスタン・イスラム共和国
「カブール国際空港保安機能強化計画」
ア カブール国際空港に,車両及び旅客に対する保安検査を実施するためのセキュリティセンター及び付随施設(車両検査施設,国境警察の監視施設等)の建設及び既存の国際線旅客ターミナルビルの増改築を行うとともに,保安検査用関連機材(乗用車両X線検査装置,車両用下部検査装置,受託手荷物用X線検査装置,CT式爆発物検知装置,機内持込手荷物用X線検査装置,門型金属探知機,卓上型爆発物痕跡検知装置,爆発物隔離コンテナ)及び大型・小型バスを整備することを通じ,同空港の保安検査の処理能力を向上させ,もって,同空港の安全性及び信頼性の向上,混雑の緩和や航空便の定期発着性の向上を図る。供与限度額は44億2,700万円。
ア 円滑な事業実施のため,今後カブール市の治安状況が著しく悪化しないこと。
イ 案件実施に際し,アフガニスタン側負担事項が実施され,案件完了後もアフガニスタン側で適切な維持管理がなされること。
ア アフガニスタンにおいて,航空運輸は道路と並ぶ運輸・交通の重要な手段となっている。首都カブールにあるカブール国際空港は,3,500メートルの滑走路1本を有する同国最大の空港であり,同国の玄関口として国内外の交通・物流の拠点となっている。カブール国際空港の年間旅客者数は,2012年には約150万人に達した。2011年から2012年にかけて我が国が実施した準備調査における予測では,同空港の年間旅客者数は,2020年に約400万人,2025年には約550万人に達すると予測されている。
イ カブール国際空港では,テロ等の不法行為に対して厳重な警備体制を敷いており,(1)空港敷地内(駐車場)への進入時の車両検査,荷物検査及び身体検査,(2)空港ターミナルへの入場時の荷物検査及び身体検査,(3)チェックイン後の受託手荷物検査,(4)出国審査後の機内持込手荷物検査及び身体検査が実施されているが,現在,これら保安検査を行う検問所が点在していることに加え,保安検査用のスペース及び機材が不足しているため,必要な保安検査手続きに時間を要し,航空機の出発に遅延を生じる事態も発生している。このため,安全かつ効率的な保安検査能力の向上が急務となっている。また,近年改正された国際基準に対応していない保安検査機器も一部使用されており,また,現在の保安検査は手作業に頼っている部分も多いため,危険物持込み防止の観点から,高精度かつ効果的な検査の実施も課題となっている。さらに,旅客者数の急増により,国際線旅客ターミナルビルのチェックインエリア,出国検査場,保安検査場,待合室等も混雑状態にあり,旅客へのサービス水準の低下も問題となっている。
ウ アフガニスタン政府は,2008年にとりまとめた「アフガニスタン国家開発戦略計画(ANDS)」において,国家開発戦略の3本柱として「治安」,「ガバナンス」,「経済・社会開発」を掲げている。このうち,「経済・社会開発」を推進するための航空セクターの施策として,カブール国際空港とヘラート空港を国際民間航空機関(ICAO)の基準と勧告を満たす国際空港とすることを目指している。また,ANDSと同時に公表された運輸民間航空省作成の「運輸民間航空省戦略」においても,カブール国際空港とヘラート空港の整備が最上位に位置付けられている。
エ このため,カブール国際空港にセキュリティセンター及び付随施設の建設,国際線旅客ターミナルビルの増改築,及び保安検査関連機材の整備を行うことにより,同空港の保安検査の処理能力向上を図り,同空港の安全性及び信頼性の向上,また同空港の混雑緩和や航空便の定時発着性を向上させ,ひいてはアフガニスタンの「経済・社会開発」を推進することを目的として,アフガニスタン政府から我が国に対し無償資金協力の要請がなされた。。
JICAの協力準備調査及びアフガニスタン側との協議を通じ,実施中の他の無償資金協力事業の進捗状況も踏まえつつ,必要性及び緊急性の高い内容に限定するとともに,アフガニスタン側の運営・維持管理体制等に適した供与内容とした。
本計画の実施により,以下のような効果が期待される。
ア 国際基準を満たす保安検査機材による安全確認が実施されることにより,カブール国際空港の安全性及び信頼性が向上する。
イ カブール国際空港の保安検査の効率性が高まり,保安検査及びチェックイン手続きに要する時間が短縮されることにより,カブール国際空港の混雑緩和や航空便の定時発着性が向上する。
(1)JICAの協力準備調査報告書
(2)開発協力適正会議(平成25年度対アフガニスタン一般プロジェクト無償資金協力「カブール国際空港保安機能強化計画」)