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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成25年3月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正

1 案件概要

(1)供与国名
 ベトナム社会主義共和国

(2)案件名
 第一次経済運営・競争力強化貸付

(3)目的・事業内容
 ベトナムの金融セクターの安定化,財政規律の強化,行政改革,国営企業の運営改善,公共投資の改善,ビジネス環境の整備等の各種政策制度改革について,財政支援を通じてその着実な実行を支援することにより,同国の経済運営・競争力の強化を図り,もって持続的成長及び貧困削減に寄与するもの。

ア 主要事業内容

  • 一般財政支援

イ 供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
150.00億円 年1.4% 30(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
 特になし

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 ベトナムは,1986年のドイモイ政策導入以降,1990年から2010年にかけての平均GDP成長率は7%を超え,2011年はマクロ経済安定化を重視する政策によりGDP成長率は5.9%に留まったものの,これまで順調な経済発展を遂げてきている。また,2010年には一人当たりGDPが1,000ドルを超え低中所得国入りを果たし,貧困層の割合も1993年の58%から2010年には10.4%にまで低下した。これらの成果は,着実な市場経済化・対外開放政策の実行,加工・製造業を中心とする外国直接投資の誘致成功,輸出産業の強化,経済インフラの整備等によるところが大きい。他方,労働集約型産業を中心とする産業の生産性停滞による 経済成長の鈍化が懸念されている他,2015年に完全発効するASEAN域内及び対中国貿易における関税撤廃や後発ASEAN各国の台頭により,ASEAN域内での競争激化は必至である状況の下,国際競争力を強化していくためには,労働集約型の産業構造から脱却し,産業の高付加価値化を図ることが不可欠である。また,短期的には改善しているものの,恒常的な 貿易収支赤字,自国通貨安,インフレ,外貨準備高不足,財政赤字など構造的なマクロ経済上の課題を抱えている。ベトナムが中長期的に競争力を強化し持続的な経済成長を実現するためには,産業構造の転換に加え,公共財政管理の強化,脆弱な金融システムの改善,国営企業の経営効率向上など抜本的な経済構造改革及びそれを支える行政制度の改善が必要とされている。
 ベトナムが2020年までの工業国化を達成し,今後も持続的な経済成長を促進するためには,適切な開発政策の実行を通じた経済運営・競争力の強化が不可欠である。本計画は,経済運営・競争力の強化を図るために必要な同国の金融セクターの安定化,財政規律の強化,行政改革,国営企業の運営改善,公共投資の改善,ビジネス環境の整備など各種政策制度改革の実行を支援するものであり,本計画を支援する必要性・妥当性は高い。

イ 我が国の基本政策との関係
 2012年12月に改訂した国別援助方針は,1)成長と競争力強化(市場経済システムの強化,産業開発・人材育成,幹線交通及び都市交通網の整備,エネルギーの安定供給及び省エネルギーの推進等),2)脆弱性への対応(環境問題,災害・気候変動等の脅威への対応,保健医療,社会保障・社会的弱者支援,農村・地方開発等),3)ガバナンス強化(法制度整備,司法・行政機能強化等)を重点分野としている。本計画は上記1)に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。

(2)効率性
 本計画の実施に際しては,本計画で支援する改革分野において実施中の技術協力プロジェクトの実施を通じて,対象となる政策制度の策定及び執行支援を行うことにより案件の効率性を確保する。

(3)有効性
 本計画の実施によって,経済運営・競争力の強化を図るために必要な同国の金融セクターの安定化,財政規律の強化,行政改革,国営企業の運営改善,公共投資の改善,ビジネス環境の整備など各種政策制度改革の実行を支援することにより,持続的な経済成長が促進されるとともに,ベトナム政府の政策立案及び実施能力が強化される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html他のサイトへ),その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html他のサイトへ)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html他のサイトへ)を参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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