評価年月日:平成25年3月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
ハノイ市エンサ下水道計画(第一期)
(3)目的・事業内容
ベトナムの首都ハノイ市における下水道システムの整備を行うことにより,同市の汚水処理量の増加を図り,もって同市とその下流地域の公衆衛生の改善と持続可能な発展に寄与するもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
284.17億円 | 年0.65% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
ア 環境影響評価(EIA)報告書は,2010年7月にハノイ市人民委員会により承認済み。
イ 下水処理場建設のために約13ヘクタールの用地取得が必要。ベトナム国内法に沿って用地取得,補償に係る手続が進められる予定。
ウ 外部要因リスクは特になし。
(1)必要性
ア 開発ニーズ
ベトナムでは急激な経済成長と都市化が進行するなか,下水道施設の整備が追い付いておらず,増大する家庭排水・商工業排水に比して下水処理能力は極めて限定的であり,都市部でさえも,汚水は概してセプティックタンク(腐敗槽)で簡易処理されているのみである。しかし,セプティックタンクは汚泥の引き抜き・清掃等の適切な維持管理が行われておらず,また排水管網が十分整備されていないため,汚水は必ずしも適切に処理されていない。そのため,都市部を流下する河川・水路,地下水は,家庭からの未処理の排水等による大きな汚濁負荷を受けており,これら河川が最終的に流れ込む主要河川においても,家庭用取水源の水域に適用される表流水質基準を満たしていない。
本計画の対象区域は,ハノイ市において特に人口密度が高い地域であり,既存の合流式管を通じて流入する未処理の家庭排水により,河川・水路の汚濁濃度が著しく高い状況にある。
本計画は市内広域の汚水処理を目的として,同市最大の大型下水処理場を建設するものであり,衛生環境の改善につながることから,本計画の実施を支援する必要性・妥当性は高い。
イ 我が国の基本政策との関係
2012年12月に改訂した国別援助方針は,1)成長と競争力強化(市場経済システムの強化,産業開発・人材育成,幹線交通及び都市交通網の整備,エネルギーの安定供給及び省エネルギーの推進等),2)脆弱性への対応(環境問題,災害・気候変動等の脅威への対応,保健医療,社会保障・社会的弱者支援,農村・地方開発等),3)ガバナンス強化(法制度整備,司法・行政機能強化等)を重点分野としている。本計画は上記2)に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
本計画においては,市街地中心部の下水管網については既存の下水管網を活用することで案件の効率性を確保することとしている。
また,新規の下水管網の整備にあたっては,なるべく道路を掘り返さない工法を採用することで,工事期間中の道路交通に与える影響を最小限に留めることとしている。
(3)有効性
本計画によってハノイ市の下水道施設の整備を行うことにより,同市の汚水処理量の増加(0立方メートル/日(基準値・2013年)→236,585立方メートル/日(2023年・事業完成2年後))を図り,もって同市とその下流地域の公衆衛生の改善と持続可能な発展に寄与する。
要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。