評価年月日:平成25年3月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
気候変動対策支援プログラム(第三期)
(3)目的・事業内容
ベトナム政府が2008年に策定した「気候変動対策にかかる国家目標プログラム」(2009~2015年)に掲げられた政策を勘案し,緩和,適応及び分野横断的課題において計14の重点セクターに分類し,政策対話等を通じて政策アクションの達成状況を評価した上で,一般財政支援の形態で融資を行い,ベトナム政府の気候変動対策を強化するもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
150.00億円 | 年0.3% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
特になし
(1)必要性
ア 開発ニーズ
ベトナムは近年の急速な経済成長により,エネルギー需要(最終消費量)が1990年から2006年の16年間で約5倍に増加しており,温室効果ガスの増加率(1995年から2005年まで)は,アジア主要国の中で最上位となっている。
他方,ベトナムは延長約3,400キロメートルに及ぶ長い海岸線と広大なデルタ地帯を有していることから,世銀等の調査によれば,気候変動の影響を最も受けやすい国のひとつに挙げられており,今後,仮に1メートルの海面上昇が起こると人口の約11%が影響を被り,GDPの約10%を失うと予測されている。また,同国が2009年に公表した分析結果では,2100年までに平均気温は2.3℃上昇し,海面は75センチメートル上昇するとの予測がなされている(1980-1999年比)。
そのため,同国の持続的発展のためには,温室効果ガス排出削減に向けた再生可能エネルギー開発・利用の促進,省エネルギーの促進,森林面積の減少抑制,防災対応能力強化等の対策の具体化が急務となっている。
ベトナム政府は,2008年に「気候変動対策にかかる国家目標プログラム」(NTP-RCC)を策定し,天然資源環境省を主管省庁として首相を議長とする運営委員会を設置し,省庁横断的に気候変動対策のための各種政策形成を指示している。
また,2011年12月に「国家気候変動戦略」が策定されたほか,2012年1月には首相を議長とする「国家気候変動委員会」(NCCC)が立ち上げられ,今後NTP-RCCの運営委員会,執行委員会の権限・機能 が同委員会に一元化されることとなっている。
本計画は,ベトナム政府と政策対話等を通じて政策アクションの達成状況を評価した上で,一般財政支援の形態で融資を行い,ベトナム政府の気候変動対策を強化するものであり,本計画のニーズは大きい。
イ 我が国の基本政策との関係
2012年12月に改訂した国別援助方針は,1)成長と競争力強化(市場経済システムの強化,産業開発・人材育成,幹線交通及び都市交通網の整備,エネルギーの安定供給及び省エネルギーの推進等),2)脆弱性への対応(環境問題,災害・気候変動等の脅威への対応,保健医療,社会保障・社会的弱者支援,農村・地方開発等),3)ガバナンス強化(法制度整備,司法・行政機能強化等)を重点分野としている。本計画は上記2)に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
技術協力によりベトナムの関係省庁へ派遣されている我が国の長期専門家と連携し,政策アクションの達成状況の評価を行うとともに,省エネルギー・再生可能エネルギー促進計画(円借款)や廃棄物管理能力向上(技術協力)等の気候変動対策に係る他の支援との連携により案件の効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施によって,国内消費エネルギー量の減少42.3百万TOE→40.2百万TOE(2013年:計画完成1年後)が見込まれるとともに,温室効果ガスの吸収・排出抑制による気候変動の緩和,気候変動の悪影響に対する適応能力強化,気候変動に係る分野横断的課題への対応を図ることで,同国の持続的な経済発展や地球規模の気候変動対策の推進に寄与する。
※TOE(Tonne of oil equivalent):石油換算トン
要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html),その他国際協力機構より提出された資料,ベトナム国別ODA評価報告書(2006年度)。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。