評価年月日:平成25年3月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
ゲアン省北部灌漑システム改善計画
(3)目的・事業内容
ベトナム中北部のゲアン省北部における灌漑施設の改修(灌漑面積29,147ヘクタール)及びハノイ市における灌漑維持管理研修所の整備を行うもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
191.22億円 | 年1.4% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
ア 環境影響評価(EIA)報告書は,2012年7月に農業農村開発省(MARD)により承認済み。
イ 約21.7ヘクタールの用地取得を伴い,ベトナム国内法手続きに沿って取得が進められている。なお,本計画においては,住民移転は発生しない。
(1)必要性
ア 開発ニーズ
ベトナムにおける貧困削減,格差是正のためには農業生産性の向上が大きな課題であるが,同国の耕地・灌漑面積は,政府による面積拡大の取組みにもかかわらず,農地転換や灌漑施設老朽化による給水能力低下により,2000年を境に伸び率が鈍化している。特に,灌漑面積が15,000ヘクタールを超える大型灌漑施設の老朽化が深刻であり,農業生産性に悪影響を及ぼしている 。
ゲアン省には計画灌漑面積29,147ヘクタールの同国最大規模の灌漑施設があるが,建設から75年が経過しており,老朽化等による給水能力の低下が著しい。計画灌漑面積のうち19,636ヘクタールには通年灌漑が可能であるが,9,511ヘクタールには必要な灌漑用水量が配水されていない。また,当該灌漑施設からは農業用水以外にも,日本企業(鉄鋼メーカー)が投資を計画しているドンホイ工業団地への給水が決定される等,用水需要が増加しており,農業・生活・工業用水全てに対応する給水能力の強化が喫緊の課題となっている。更に灌漑施設の用水管理においても,正確な流量データに基づいた,きめ細かい配水管理がなされていないことが非効率な用水利用の要因となっており,施設の改修と合わせ,用水維持管理にかかる能力強化が急務である。
本計画は,老朽化した灌漑施設の改修による給水能力強化及び灌漑維持管理研修所の整備による灌漑施設運営・維持管理能力の向上を図るものであり,本計画のニーズは大きい。
イ 我が国の基本政策との関係
2012年12月に改訂した国別援助方針は,1)成長と競争力強化(市場経済システムの強化,産業開発・人材育成,幹線交通及び都市交通網の整備,エネルギーの安定供給及び省エネルギーの推進等),2)脆弱性への対応(環境問題,災害・気候変動等の脅威への対応,保健医療,社会保障・社会的弱者支援,農村・地方開発等),3)ガバナンス強化(法制度整備,司法・行政機能強化等)を重点分野としている。本計画は上記②に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
本計画は,老朽化した灌漑施設の改修を行うだけでなく,灌漑維持管理研修所の整備による灌漑施設運営・維持管理能力の強化を図ることで案件の効率性を確保することとしている。
また,灌漑施設運営・維持管理能力の強化にあたっては,灌漑維持管理研修所において全国を対象とした灌漑施設運営・維持管理の人材育成を実施するとともに,技術協力「貧困地域小規模インフラ整備計画にかる参加型水管理推進プロジェクト」と連携することで,技術協力の効果を一層高めることとしている。
(3)有効性
本計画によって灌漑施設の改修を行うことにより,灌漑面積の増加(19,636ヘクタール→29,147ヘクタール(2021年:完成2年後)を図るとともに,灌漑維持管理研修所の整備を行うことにより,ベトナム全国の灌漑施設の維持管理能力強化を図り,もって同国の農業生産性の向上,農村住民の生計向上に寄与する。
要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html),その他国際協力機構より提出された資料,ベトナム国別ODA評価報告書(2006年度)。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。