評価年月日:平成25年3月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
ハノイ市都市鉄道建設計画(1号線)フェーズI(ゴックホイ車両基地)(第一期)
(3)目的・事業内容
ベトナムの首都ハノイ市において,幹線鉄道の車両基地を建設することにより,都市鉄道の整備に向けた準備を進めるとともに,車両の保守・運用の効率化を図り,もって旅客・貨物鉄道輸送の需要増加への対応及び鉄道運行の安全性向上に寄与するもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
165.88億円 | 年0.2% | 40(10)年 | 日本タイド・二国間タイド |
(注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
ア 環境影響評価(EIA)報告書は,2012年7月にベトナム天然資源環境省により承認済み。
イ 約114ヘクタールの用地取得,75世帯の住民移転を伴い,ベトナム国内法に沿った用地取得及び住民移転計画に沿った住民移転が進められる予定。
ウ 外部要因リスクは特になし。
(1)必要性
ア 開発ニーズ
ハノイ市では都市化が進展し,人口が2000年の274万人から2006年には322万人に増加,さらに2008年の隣接地域との合併により,2010年には656万人に達した。これに伴う市内道路交通量の増加が著しく,交通渋滞が深刻化しており,効率的な経済社会活動を阻害する要因となっている。既存の公共交通の輸送能力及び道路網の大幅な拡充が困難な状況から,交通渋滞及び大気汚染の緩和に資する新たな大量都市交通システム整備が必要とされている。
本計画は旅客・貨物鉄道輸送の需要増加への対応及び鉄道運行の安全性向上に寄与するものであり,また,2011年に首相承認された「ハノイ市経済社会開発マスタープラン(~2020年)」の中で,優先事業として位置付けられており,本計画を実施する必要性は高い。
イ 我が国の基本政策との関係
2012年12月に改訂した国別援助方針は,1)成長と競争力強化(市場経済システムの強化,産業開発・人材育成,幹線交通及び都市交通網の整備,エネルギーの安定供給及び省エネルギーの推進等),2)脆弱性への対応(環境問題,災害・気候変動等の脅威への対応,保健医療,社会保障・社会的弱者支援,農村・地方開発等),3)ガバナンス強化(法制度整備,司法・行政機能強化等)を重点分野としている。本計画は上記1)に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
事業完成後の持続性確保の観点から,コンサルティングサービスのTORに運営維持管理会社設立支援を含め,維持管理体制の構築・強化を図る予定である。また,技術協力プロジェクト「ハノイ市都鉄道運営組織設立支援プロジェクト」と連携することにより,案件の効率性を確保する。
(3)有効性
本計画によって,ベトナムの首都ハノイ市において幹線鉄道の車両基地を建設することにより,都市鉄道の整備に向けた準備を進めるとともに,車両の保守・運用の効率の向上(完成2年後(2021年)見込み:機関車の検修作業必要日数60日→29日)を図り,もって地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与し,同国の経済・社会発展が期待される。
要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html),その他国際協力機構より提出された資料,ベトナム国別ODA評価報告書(2006年度)。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。