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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成25年2月8日
評価責任者::国別開発協力第一課長 横山正

1 案件概要

(1)供与国名
 フィリピン共和国

(2)案件名
 マニラ首都圏大量旅客輸送システム拡張計画

(3)目的・事業内容
 マニラ首都圏において,LRT1号線及びLRT2号線延伸に係る整備を実施することにより,両路線の輸送力の増強を図り,もってマニラ首都圏の道路混雑の緩和や大気汚染・気候変動対策に貢献する。

ア 主要事業内容

  • 車両調達(LRT1号線延伸)
  • 車両基地(LRT1号線既存基地の改修及び新規建設)
  • 鉄道システム(電気,機械,信号,通信)(LRT2号線延伸区間)
  • コンサルティング・サービス(詳細設計,入札補助,施工管理)

イ 供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
432.52億円 0.20% 40(10)年 日本タイド

(注)コンサルティング部分については金利0.01%を適用。


(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア EIA(環境影響評価):本計画は鉄道セクターのうち大規模なもの,また影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。

イ 用地取得及び住民移転:LRT1号線の新規サテライト車両基地用の用地を占有している42世帯(194人)の住民移転を伴う。移転手続きは,軽量鉄道公社(LRTA)が作成した住民移転計画(2012年)及びフィリピン国内手続きに則って実施される。また,LRT2号線延伸に関しては住民移転及び用地取得は発生しない。

ウ 外部要因リスク:特になし

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 マニラ首都圏では,急速な人口増加や登録自動車総数の増加等に伴って交通事情は悪化の一途をたどっており,交通渋滞に由来する経済的損失や大気汚染等が生じている状況である。マニラ首都圏では,1980年代半ばから都市鉄道の整備が進められているが,近年の首都圏中心部及び郊外の人口増加を背景とする需要増に対応するため,鉄道路線の延伸が必要となっている。
 「フィリピン開発計画(2011~2016)」では,マニラ首都圏の混雑緩和を通じた物流等の活性化を重点課題としており,そのための政策として軌道系の大量旅客輸送システムの拡張を掲げている。本件LRT1号線延伸及びLRT2号線延伸事業は,アキノ政権において官民連携(PPP)によるインフラ開発事業の優先10事業の一つに掲げられているほか,運輸通信省 の「公共投資プログラム(2011~2016年)」においても優先事業として位置付けられている。

イ 我が国の基本政策との関係
 対フィリピン国別援助方針では,1)投資促進を通じた持続的経済成長,2)脆弱性の克服と生活・生産基盤の安定,3)ミンダナオにおける平和と開発を重点分野としている。本件は,主要な経済成長基盤である運輸・交通網の整備によってマニラ首都圏の経済成長を図るものであり,1)に合致するもの。

(2)効率性
 既往の鉄道事業の事後評価等から,車両のスペアパーツが入手困難であるために一部運行不能となっており,本体調達購入の際,十分なスペアパーツを同時に購入する等の対応が必要との教訓を得ている。これを踏まえ,本件においては車両調達時に十分なスペアパーツが含まれる事業内容にしている。
 また,本件においては,LRT1号線及び2号線の延伸後の全区間における運営・維持管理を一定期間民間業者が担うことが想定されている。

(3)有効性
 本計画の実施により完成2年後の2018年には,乗客輸送量(キロメートル/日)が,379万人から592万人(LRT1号線)・169万人から346万人(LRT2号線)に,運行数が,222本から258本(LRT1号線)・342本から428本(LRT2号線)に増加し,中部ルソンとマニラ首都圏の間の輸送効率の向上が図られることにより,当該地域の経済開発が期待される。ひいては我が国との二国間関係が増進される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html他のサイトへ
 フィリピン国別ODA評価報告書(2010年度),その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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