評価年月日 平成24年4月9日
評価責任者:国別開発協力第三課長 堤尚広
ケニア共和国
モンバサ港周辺道路開発計画
東アフリカの物流拠点であるケニアのモンバサ港周辺において,新コンテナターミナルから北部回廊に接続する道路及びモンバサ湾南岸への道路を建設することにより,物流の円滑化を図ることをもって,同国のみならず近隣諸国を含む地域全体の経済社会発展に寄与するもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
276.91億円 | 年1.2% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(注)コンサルタント部分の金利は0.01%を適用。
ア EIA(環境影響評価):環境社会影響評価(ESIA)報告書は2011年11月にケニア国家環境管理庁により承認済み。
イ 土地取得及び住民移転:約267ヘクタールの用地取得と445名の住民移転が発生するが,実施機関がケニア国内法及び旧JBIC環境社会配慮ガイドラインに基づき策定した住民移転計画に沿って移転・補償手続きが進められる。
ウ 外部要因リスク:特になし。
ア 開発ニーズ
2008年に策定されたケニアの長期開発計画「Vision 2030」は,高い生活水準,国際的な競争力及び経済的繁栄を2030年までに達成することを国家目標としている。同計画では,インフラ開発は国の基盤を支える柱の一つとして位置づけられている。道路セクターの開発計画「道路セクター投資プログラム」(2010)においては,国際道路を含むすべての国道のアスファルト舗装化を目標として挙げるとともに,本計画を優先プロジェクトの一つとしている。
東アフリカ最大の国際港湾であるモンバサ港は,ケニア国内のみならず,東アフリカ共同体(EAC)諸国の物流輸送ルート(北部回廊)の拠点として貨物取扱量が近年急増しており,港湾設備や港湾周辺のインフラの未整備が円滑な物流の障害の一つとなっている。特にモンバサ港と北部回廊を結ぶ道路は現状でも交通渋滞が深刻であるが,円借款で建設中の新コンテナターミナルが完成する2016年以降は更に深刻化すると見込まれている。また,港を含むモンバサ中心部から市の南部への移動手段は海峡を渡るフェリーのみのため,市南部地域の開発やタンザニア方面への物流の障害となっている。モンバサ港を起点とする物流機能の向上と地域のバランスある開発のためには,新コンテナターミナルと北部回廊,また同ターミナルと市南部を結ぶ新たなルートの整備が喫緊の課題となっている。
イ 我が国の基本政策との関係
ケニアの事業展開計画では,重点分野「経済インフラ整備」の中で「輸送インフラ整備」を開発課題として位置づけている。その中で,「広域輸送インフラ改善プログラム」を設け,国際回廊インフラ整備等の支援を通じたケニア及び東アフリカ地域全体の活性化を図ることを目的としている。また,広域インフラ整備は,第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)で提唱された横浜宣言においても重視されている。
本件と併せて,技術協力プロジェクト等の技術協力を実施することで,総合的な道路維持管理体制を強化し,広域輸送網の円滑化を図ることにより,案件の効率的な実施を図る。
本計画の実施により,ミリティニ~ギブンダニ間の所要時間が大幅に短縮(70.5分から17分(完成2年後・2020年))が見込まれており,22,000PCU(ミリティニ~ムワチェ間),28,200PCU(ムワチェ~ギペブ間),9,400PCU(ムワチェ~ムテザ間),9,400PCU(ムテザ~ギブンダニ間)の交通量が各区間で見込まれる。また,同国の道路渋滞の緩和,物流の円滑化,同国の投資環境の向上,同国のみならず近隣諸国を含む地域全体の経済社会発展に寄与することが期待され,二国間関係の強化が図られる。
※PCU(Passenger Car Unit)
:大型車や二輪車等大きさが異なる車輌に対し,特定の比率を乗じて,交通量を乗用車だけから構成されている値に換算したもの。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン
( http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。