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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成25年2月19日
評価責任者:国別開発協力第二課長 徳田修一

1 案件概要

(1)供与国名
 バングラデシュ人民共和国

(2)案件名
 カチプール・メグナ・グムティ第2橋建設及び既存橋改修計画(I)

(3)目的・事業内容
 バングラデシュの首都ダッカと国内第2の都市チッタゴンとを結ぶ国道1号線上に位置するカチプール橋,メグナ橋,グムティ橋を改修・新設し, 洗掘対策や耐震性向上などの観点から橋梁の安全性の向上を図り,また急増する交通需要に対応することにより,バングラデシュ経済全体の活性化に貢献するもの。また河川の水位上昇に対応可能な橋梁を整備することにより,気候変動の悪影響への適応を支援するもの。

ア 主要事業内容

  • カチプール橋,メグナ橋,グムティ橋の改修,第2カチプール橋,第2メグナ橋,第2グムティ橋及び各取り付け道路の建設
  • 過積載管理設備の設置
  • コンサルティング・サービス

イ 供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
289.45億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア EIA(環境影響評価): 2012年10月にバングラデシュ環境森林省環境局(Department of Environment)により承認済み。

イ 用地取得及び住民移転:本計画は,実施機関所有地内で行われるため用地取得は不要であるが,3橋梁合わせて972人の非自発的住民移転が必要となる。移転は,同国国内手続き及び住民移転計画(RAP)に沿って進められる。RAP作成過程で実施された住民協議では,事業概要,補償や支援策,モニタリング計画,苦情処理メカニズム等について説明を行っている。

ウ 外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 バングラデシュでは近年の堅調な経済発展に伴い,1975年から2005年までの過去30年間で貨物取扱量が約8倍にまで拡大し,近年では6~7%のペースで毎年増加しており,旅客輸送量も同期間中に約6.5倍に増加するなど,貨物量・旅客数が増加し続けている。ダッカ首都圏と第2の都市であるチッタゴン間をつなぐ国道1号線の車両交通台数は急激に増加し,同国道上に架かるカチプール橋,メグナ橋,グムティ橋では想定容量を最大約6割上回る。そのため,バングラデシュ政府は2008年から国道1号線全区間(道路)の8車線化または4車線化を進めており,現在2車線の同橋梁においても,交通容量の拡大(第2橋の建設)が急務となっている。また,これら既存橋においては,路面の損傷が激しく交通に支障が生じており,完成後に引き上げられた国内耐震基準を満たしておらず,橋脚の洗掘も進行しており,橋梁の安全性が懸念される状況となっていることから,改修・補強が緊急の課題となっている。

イ 我が国の基本政策との関係
 バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ,2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(a)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化,(b)社会脆弱性の克服を掲げている。本計画は,同国の経済回廊上の橋梁の改修と新設による輸送能力の強化支援という観点から上記(a)に合致した支援となっている。また,本計画は河川の水位上昇に対応可能な橋梁を整備する観点で気候変動の適応に資する案件であり,(b)に含まれる防災・気候変動対策に貢献する支援となっている。

(2)効率性
 実施機関の大規模橋梁に関する維持管理能力強化,通行料金設定を含む中長期的な財務計画能力の強化,過積載取り締まりの強化が重要との過去の類似案件の事後評価結果を踏まえ,過積載取り締まりに資する軸重計の導入などを進めるとともに,コンサルティング・サービス等を通じて実施機関の橋梁維持管理能力の強化を図ることにより効率性を高めるとしている。

(3)有効性
 国道1号線の車両交通の急激な増加に伴い,橋梁の容量不足が円滑な物流の阻害要因となっていることから,本件橋梁の改修及び新設は,同国の経済回廊の物流の円滑化を通じて同国の経済発展を促進させるもの(所用時間が2012年の約23分から2023年(完成2年後)には約5分に短縮される)。また,気候変動の影響による河床標高変化に対応可能な橋梁の建設により,バングラデシュの気候変動の適応にも寄与する。更に,バングラデシュ経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html他のサイトへ),その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html他のサイトへ)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html他のサイトへ)を参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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