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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成25年1月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 徳田修一

1 案件概要

(1)供与国名
 バングラデシュ人民共和国

(2)案件名
 全国送電網整備計画

(3)目的・事業内容

(ア)バングラデシュ全域において変電所及び送電線の新設・増設を実施することにより,同国の電力系統の安定化・供給信頼度の向上,送電ロス率の削減を図ることにより,同国の経済発展に寄与するもの。

(イ)主要事業内容

  • 建設工事
    (230/132キロボルト変電所,132/33キロボルト変電所の新設・増設,230キロボルト・132キロボルト送電線の敷設)
  • コンサルティング・サービス

(ウ)供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
187.36億円 0.01% 40(10)年 一般アンタイド

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

(ア)初期環境調査(IEE)報告書は,2012年1月に環境森林省環境局(DOE)が承認済み。また,環境影響評価(EIA)報告書は,2013年3月までにDOEより承認される見込み。

(イ)用地取得及び住民移転:本計画に必要な約25.5ヘクタールの用地面積のうち,約20.6ヘクタールは民有地の取得が必要だが,同国国内法及び実施機関が定める補償方針に従い,再取得価格での補償を実施し,用地取得の手続きが進められており,工事開始までに完了予定。なお本計画に係る住民移転は発生しない。

(ウ)外部要因リスク:特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

(ア) 開発ニーズ
 バングラデシュの国民一人当たりの年間電力消費量は170キロワット時(2009/10年度)と世界でも最低レベルの水準にあり,電化率も未だ47%と低い。また,電力需要は供給を大幅に上回り,最大発電容量は4,699メガワットと需要の約7割程度に留まるため,ピーク時を中心に計画停電が実施されている。今後年率約10%の需要増加が予測されるが,新規発電所建設計画の遅延等により,今後も引き続き需給ギャップが解消されない見込みであることから,新規電源開発(特に高効率発電所),石炭火力を含むエネルギー源の多様化に加えて,送・配電部門におけるシステムロスの改善等を通じて,電力の安定的な供給体制を確立していくことが喫緊の課題となっている。このため,バングラデシュ政府は,400キロボルト送電線(650キロメートル),230キロボルト送電線(460キロメートル),132キロボルト送電線(422キロメートル)の整備の優先的な実施を目標としている。

(イ)我が国の基本政策との関係
 バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,電力,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(a)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化(「経済成長を通じた貧困削減」を追及するためのインフラの整備等),(b)社会脆弱性の克服(貧困削減,初等教育,母子保健,安全な飲料水の供給などMDGsの達成に貢献)を掲げている。本件計画は,電力系統の安定化・供給信頼度の向上,送電ロス率の削減の観点から上記(a)に合致した支援となっている。

(ウ)効率性
 本件計画の効率的な実施,案件効果の持続的な発現のためには,電力料金の適正化,配電部門の運営の健全化が必要であるため,配電部門の財務健全性強化の観点から適切な電力託送料金が設定されるよう,継続的なモニタリングや,バングラデシュ政府への働き掛けを行う。

(エ)有効性
 本件は,バングラデシュ政府が優先的に整備を必要としている送電線の中でも特に優先度の高い,バングラデシュ第2の都市であるチッタゴンを含む各地域の中核都市周辺に送電網を整備するものであり,産業・商業の集積地域への電力供給を担うもの。本件事業により,バングラデシュの電力系統の安定化,低い送電ロス率の維持,電力の安定供給を図ることにより同国の経済発展に貢献する(完成時点(2017年見込み):変電容量(メガ・ボルトアンペア)[230/132キロボルト]6,450(2010年)→10,875/[132/133キロボルト]9,773(2010年)→16,063)。更に,バングラデシュ経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html他のサイトへ),その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html他のサイトへ)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html他のサイトへ)を参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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