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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成25年2月19日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山正

1.案件名

(1)供与国名

 トンガ王国

(2)案件名

 マイクログリッドシステム導入計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,トンガタプ島において,太陽光発電モジュール,蓄電設備(リチウムイオンキャパシタ)及びマイクログリッドコントローラーの整備を行うことにより,再生可能エネルギーの出力変動を抑え,電力系統の安定化を図ることを目的としている。供与限度額は15億7,300万円である。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がトンガ政府により実施される必要がある。
 本計画により導入されたマイクログリッドシステム等に関して,蓄電池の維持管理や更新に係るサポート体制を確立するとともに,再生可能エネルギーの導入によって低減できる経費見合い分を更新費用として積み立てること。

2.無償資金協力の必要性

(1)必要性

 ア トンガは電力供給の98%以上を輸入燃料によるディーゼル発電に依存しているため,国際的な原油価格の変動が同国の経済活動や国民の生活に大きな影響を与えるなど,エネルギー安全保障の観点からも極めて脆弱である。そこで,同国は,温室効果ガスの排出削減とエネルギー安全保障の向上という二つの命題に対処するため,2020年までに電力供給の50%を再生可能エネルギーで賄うという政策目標を2009年に閣議決定し,同政策目標を実現するための指針としてトンガ・エネルギー・ロードマップ2010-2020(TERM)を策定した。

 イ 同国は同指針を踏まえ,太陽光発電設備の導入を図るなどしているが,政策目標を達成するためには,さらなる再生可能エネルギーの導入が必要である上,出力変動を伴う太陽光,風力等を大量に導入した場合には安定的な電力供給が難しく,かつ電力系統の周波数が変動し,電力の品質を維持することが困難となる。そのため,さらなる再生可能エネルギーを導入するとともに,マイクログリッドシステムを構築することにより安定した電力供給と電力系統の周波数の変動を抑制することが,同国の電力分野にとって早急に対応が必要な課題となっている。なお,債務持続性等の観点から,円借款での実施は難しい。

(2)効率性

 ア 本計画で調達する太陽光発電設備容量,蓄電設備(リチウムイオンキャパシタ)容量及びマイクログリッドコントローラーは,トンガの2012年の電力品質(電圧及び周波数変動)を維持することを基準としており,設計にあたってはプロジェクト対象地域における系統モデルを構築し,シミュレーションを行い計画の前提条件を検証した上で,効率的で,かつ経済的な運転・維持管理となる設備構成とした。

 イ 本計画で導入するマイクログリッドシステムは,供用開始後の運転・維持管理を実施するトンガ電力公社の技術レベルに合った設計とした。なお,トンガ電力公社にはニュージーランドの技術が共有されているが,OJT及びソフトコンポーネントを通じて技術を補完する。

 ウ 技術的及び経済的に適切な設計とするため,資材の仕様は可能な限りBS,ACI,ASTM等の国際規格に準拠した標準品を採用し,少品種化により資材の互換性を図り必要最小限の仕様,数量を選定することとした。

(3)有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

 ア マイクログリッドシステムの構築により,再生可能エネルギーの出力変動を抑えることが可能となり,電力系統の安定化が図られる。

 イ 本件実施により,発電に使用するディーゼル燃料が年間327キロリットル削減される(年間約2,800万円の経費削減見込み)。

 ウ 本件実施により,CO2の排出量が年間886 CO2トン削減される。

 エ トンガは国際場裏で我が国の立場を支持する大洋州地域における重要なパートナーである。また,我が国は2012年5月の第6回太平洋・島サミットにおいて,「東日本大震災の経験を踏まえた防災協力」,「環境・気候変動」,「持続可能な開発と人間の安全保障」,「人的交流」,「海洋問題」の5つの柱を中心に支援を実施していくことを表明しており,本件支援は同支援策の一環として,同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)トンガ政府からの要請書

(2)JICAの準備調査報告書

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