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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成23年5月24日
評価責任者:国別開発協力第三課長 石塚英樹

1.案件名

1-1.供与国名

 スーダン共和国
 (同国は2011年7月に南スーダン共和国として分離独立した)

1-2.案件名

 ジュバ市水供給改善計画

1-3.目的・事業内容

 本計画は,南部スーダンの首都であるジュバ市の人口増加により深刻化している水不足に対応するため,上水道施設を整備し,安全な水の安定供給を図るものである。供与額は38億6,900万円であり,浄水施設の拡張,配水池,送配水管路,公共水栓等の給水関連施設の整備を行うものである。

1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項が南部スーダン政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備される給水施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

(2)先方政府が本計画により整備される給水施設運営要員の人件費等の予算確保を適切に行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)スーダンは,アラブ・イスラム文化圏の北部とキリスト教・土着信仰文化圏の南部から構成されるが,南北間には,植民地統治時代の分断政策及び独立後の北部政府による南部支配を通じ,大きな経済的・社会的格差が存在する。2005年1月に包括和平合意が成立し,内戦終結を迎えたものの,20年にわたる内戦は,経済状況の悪化を招き,住民の生活環境にも大きな影響を及ぼした。

(2)2005年10月に南部スーダン自治政府が樹立され,ジュバ市がその首都とされた。同市においては国内避難民の帰還等による人口の急激な増加に伴い,内戦により荒廃し老朽化した社会施設の整備が復興・開発に向けた緊急の課題となっている。

(3)給水分野においても,浄水処理能力の不足等により,ジュバ市の人口約40万人に対して,水道水を利用できるのは約34,000人にすぎず,他の住民は,井戸又は河川水をそのまま利用している状況にある。その上,既存井戸の多くは塩分濃度が高く,河川水は未消毒であるなど,水質に深刻な問題があるため,水道が利用できない住民は,水因性疾患による医療費負担が,水道利用が可能な住民の3倍以上に達している。また,水汲みが特に児童や女性の重い労働負担になっている。給水状況の改善は南部スーダン政府も優先課題としているものの,厳しい財政事情,機材不足等により,必要な公的給水を提供できていない。

(4)このため,南部スーダン政府の要望をふまえ,暫定憲法上,外交権限を有するスーダン国民統一政府は,ジュバ市において,給水施設の改修を行い,住民に安全で清浄な水を供給する計画を,南部スーダンの平和と安定を確保する上での優先課題であるとして,右計画の実施に必要な資金につき,我が国政府に対し無償資金協力を要請したものである。南部スーダンは本年7月に独立を予定しており,その首都ジュバの住民が安全な水の供給を受け,「平和の配当」を実感し,平和の定着を支援するためにも,本計画を実施する意義は大きい。

2-2.効率性

(1)設計に当たっては,浄水場で処理された安全な水を広範囲に供給することを優先し,給水方式は各戸給水ではなく公共水栓及び給水車による給水として,より多くの住民への裨益を図る。

(2)既存の水道施設は配水管が老朽化していて漏水が多く効率が悪いため,新しく建設する水道施設は原則として既存系統から独立させ,効率的な配水に資するシステムとする。ただし,緊急時の相互融通ができるように連絡配管を設けておく。

(3)現在の運用・維持管理技術の適用が可能となるように,計画施設の運転操作は既設の水道施設とほぼ同じ運転操作方式とする。

2-3.有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

(1)ジュバ市水道施設の整備により,給水量が現在の7,200立方メートル/日から18,000立方メートル/日に増加する。

(2)浄水処理された安全な水の給水人口が現況の約3万4千人から2015年には約38万9千人に増加する。

(3)安全で安定的な水供給の実現により,衛生状況が改善され,水因性疾病の罹患率軽減に寄与する。

(4)児童及び女性の過重な水汲み労働が改善される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)スーダン国民統一政府からの要請書

(2)JICAの概略設計調査報告書

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