評価年月日 平成24年5月21日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山正
パラオ共和国
首都圏電力供給能力向上計画
本計画は,パラオの主要発電所の一つであるアイメリーク発電所において,ディーゼル発電設備の整備を行うものである。本事業により発電設備を整備することで,安定した電力供給体制を構築し,首都圏の経済社会活動の活性化と国民生活の安定化を図ることを目的とする。供与限度額は17億2,900万円であり,発電所棟及び遮断器室棟を建設するとともに,ディーゼル発電設備(5メガワット×2台)や,発電設備に必要な機械設備(燃料供給設備等),発電設備に必要な電気設備(所内変圧器等)を供与する。
以下の事項がパラオ共和国政府により実施される必要がある。
ア 本計画により建設される発電所への要員配置や教育・訓練を計画的に実施し,同発電所の運転が円滑に行われるよう配慮すること。
イ 本計画により建設される発電所の維持管理のために必要となるスペアパーツ,消耗品類を遅滞なく調達・補充し,定期的なメンテナンスを確実に実施すること。
ウ 予防保全の導入・実施により,クランク軸焼損等の重大事故を未然に防止すること。
エ 発電設備の維持管理費が確保できるよう実施機関であるパラオ電力公社の収益を改善すること。
ア パラオの首都圏の電力供給は,アイメリーク発電所とマラカル発電所により行われている。同国の電力需要は,人口増加や国民一人当たりの電力消費量の増加等により,過去急速に増加した。これにより供給予備力が不足し,メンテナンスのために発電機を停止することができなくなったことから,維持管理不足や電力供給設備の老朽化により,安定した電力供給を行うことが困難になった。
イ このような状況を受け,同国は,電力供給の安定化を図るために,我が国支援により実施された「電力供給マスタープラン調査」の内容を反映した「戦略的エネルギーセクターアクションプラン」を基に,5メガワット×4台の発電機の新設を目指したが,資金不足等により計画どおりの開発が進められていない。
ウ また,2011年11月に発生したアイメリーク発電所の火災により,電力供給力が電力需要の半分まで低下し,約1か月にわたって計画停電が実施されるなど,国民生活に大きな影響を与えた。その後,故障により停止していた発電機の運転再開等により電力供給力は回復し,パラオ政府の要請を受けて実施した我が国緊急無償により小型の発電機が供与されたものの,供給信頼性を維持し,発電機の定期点検を実施するのに十分な供給予備力は確保できておらず,新規発電機の整備が急務となっている。
ア 発電設備は,パラオの既存施設との整合性,運転・維持管理が容易であること,緊急性等を考慮して,ディーゼル発電設備とした。
イ 本計画で供与する発電設備を構成する機器については,ディーゼル発電設備としての機能を果たし,配電系統と連携して運転することにより,本計画の目的を達成する上で必要最小限のコンポーネントを選定した。なお,既存の設備が存在し,容量等に余裕があるものは,既存の設備を活用した。
ウ また,各機器の仕様は,供与開始後の運転・維持管理を実施するパラオ電力公社の技術レベルを逸脱しないものとした。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア 新規発電機の整備により,供給予備力が確保(0メガワット(2011年)→10.54メガワット(2015年目標))されることで,発電設備のトラブルに起因する電力供給制限日数が減少(42日/年(2011年)→0日/年(2015年目標))し,同国の経済発展や産業振興,住民の生活水準の向上に貢献する。
イ 新規発電機の整備により,供給予備力が確保されることで,維持管理のために発電設備を停止することが可能になり,発電機の長寿命化が図られるなど,発電設備の効果的・効率的な運用が可能になる。
ウ パラオは,国際選挙・決議等で我が国立場を支持する大洋州地域における重要なパートナーであり,本件支援は同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。
(1)パラオ共和国政府からの要請書
(2)JICAの準備調査報告書