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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成24年10月10日
評価責任者:国別開発協力第二課長 德田修一

1.案件名

(1)供与国名

 パキスタン・イスラム共和国

(2)案件名

 「カラチ小児病院改善計画」

(3)目的・事業内容

 シンド州カラチ市のカラチ小児病院は比較的専門性の高い外来医療や一般的な入院医療を対象とする州立の二次医療施設として位置付けられているが,設備の不備等から十分な医療サービスを提供できていない。本事業では既存施設に隣接する形で施設を建設し,新生児治療室,小児集中治療室,眼科,耳鼻咽喉科等専門外来,手術室及び関連医療機材を整備することで,医療サービスの改善を図る。供与限度額は14億2,300万円。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア 円滑な事業実施のため,カラチ市の治安状況が著しく悪化しないこと。

イ 案件実施に際し,パキスタン側負担事項が実施され,案件完了後もパキスタン側で適切な維持管理がなされること。

2.無償資金協力の必要性

(1)必要性

ア パキスタンでは,乳児死亡率が70(2009年,出生千対),5歳未満児死亡率は87(同)と南アジア地域諸国の中でも高い。特にシンド州は,パンジャブ州と並びパキスタンの経済成長を牽引する重要な州であるが,乳児死亡率および5歳未満児死亡率は全国平均に高い。

イ カラチ小児病院は,人口増加の著しいカラチ市の中でも貧困層の割合が高い地域に位置し,比較的専門性の高い外来医療や一般的な入院医療を対象とする州立の二次医療病院として位置付けられているが,設備の不備等から十分な医療サービスを提供できていない。

ウ このため患者の多くは,風邪等日常的な疾病に対する治療である一次医療から手術など高度技術を必要とする三次医療までを包括的に提供できるカラチ市内中心部の国立小児病院(NICH)に集中し,NICHでは本来重点的に対応すべき高度医療を供給できておらず,患者は症状に見合った適切な治療を受けることが困難な状況にある。

エ パキスタン政府は,2001年に策定した国家保健計画において策定した10の重点目標の一つ「不十分な医療サービスの改善」の下で,一次から三次にわたる医療施設の整備拡充を進めている。また2009年に策定した国家保健政策では,貧困層・社会的弱者への医療・保健サービスの向上等を目標に挙げており,本件はパキスタン政府の開発政策に合致している。

オ かかる状況下,パキスタン政府はカラチ小児病院の医療サービス供給体制を増強する支援を我が国に要請してきたものである。

(2)効率性

 JICAの協力準備調査及びパキスタン側との協議を通じ,カラチ小児病院が小児専門の二次医療施設として機能するという目的から必要性・緊急性の高い内容に限定するとともに,パキスタン側の運営・維持管理体制等に適した供与内容とした。

(3)有効性

 本計画の実施により,以下のような効果が期待される。

ア 入院患者の収容可能数が2011年の2,276人から2018年には4,100人に拡大するとともに,従来対応が困難であった新生児治療への対応が可能となり,カラチ小児病院の医療サービスが大幅に改善する。

イ カラチ小児病院が二次医療施設としての機能を発揮することで三次医療施設であるNICHの負担が軽減し,患者は症状に見合った医療施設で適切な診療を受けることが可能となり,地域医療サービスの改善に繋がる。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)JICAの概略設計概要書

(2)パキスタン・イスラム共和国からの要請書

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