評価年月日 平成25年2月22日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山正
ミャンマー連邦共和国
「気象観測装置整備計画」
ヤンゴン,チャオピュー,マンダレーにおける気象レーダーシステムの整備,全国30カ所における自動気象観測システム(AWS)の整備等により,ミャンマーの気象監視能力を強化し,サイクロンや大雨などの気象災害への対応能力の向上を図るもの。供与限度額は,38.42億円。
案件実施に際して,ミャンマー側負担事項が実施され,案件完了後もミャンマー側により適切な維持管理が行われる必要がある。
(1)ミャンマーでは,毎年のように襲来するサイクロンの被害を受けており,また多数の大小の河川が国土を網の目のように流れる地形であること,国境地帯では山岳地帯が連なっていることから,大雨による洪水や土砂災害も頻発している。特に,2008年5月に上陸したサイクロン・ナルギスは,13万8千人を超える死亡・行方不明者を出し,国全体の社会経済活動に甚大な被害を与えた。
(2)サイクロン監視に最も重要な位置であるベンガル湾沿いのチャオピューにあるミャンマー唯一の気象レーダーシステムは,老朽化により2004年に完全に稼働を停止し,ミャンマー政府はサイクロンを直接監視する手段を失っている。また,全国各地の気象観測所での観測も,マニュアル観測であり,データの収集に時間がかかることから,気象局は有効な予警報を行うための迅速な雨量等の把握ができない状況である。
(3)気候変動による自然災害の激甚化が懸念される中,サイクロンや大雨による洪水等の自然災害に対する適切な災害対策を実施するため,ベンガル湾岸を含め国土の大部分を監視範囲に置くことのできる気象監視網の整備が不可欠となっている。
より広域かつ精度の高いレーダー観測が可能となるようなレーダーシステムを構築するとともに,導入される気象観測装置の運用維持管理,成果物の気象予報業務への反映等が十分効果的に実施されるよう,技術移転を実施する。
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
(1)より正確で早期の警戒情報の発信が可能となり,災害対策・避難活動支援が適時に開始される。その結果,サイクロン等の気象災害による被害が軽減される。
(2)現状では不可能なサイクロンの風向・風速・雨量の直接的な監視が,可能となる。サイクロンの位置・経路の把握のため,現在は衛星画像を30~60分間隔で入手しているが,レーダー圏内では1~10分間隔で把握可能となる(2020年目標値)。全国の観測所における降水データの把握能力が向上する(現在は180分間隔,全データ収集まで60~70分。目標値では60分間隔,全データ収集まで10分)。雨雲の動向に関する30分~1時間単位での短時間予測が可能となり,大雨予測能力が向上する。
(3)ヤンゴン国際空港周辺での乱気流等の監視能力が向上し,航空機離発着の安全性が向上する。
(1)JICAの概略設計概要資料
(2)ミャンマー政府の要請書