評価年月日 平成24年4月17日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山正
マーシャル諸島共和国
国内海上輸送改善計画
本計画は,マーシャルにおける生命線である海上輸送能力を回復・維持するとともに,離島振興を促進するため,貨客船(1隻)と上陸用舟艇型貨客船(1隻)を供与するものである。本事業は,貨物及び旅客の海上輸送が定期的に行われることによる安定的な輸送力の確保,同国の貴重な外貨収入源であるコプラの輸送量の増加による離島住民の現金収入の増加,及び重量貨物の輸送能力の回復を目的とする。供与限度額は12億8,800万円である。
以下の事項がマーシャル政府により実施される必要がある。
本計画により建造された貨客船(1隻)と上陸用舟艇型貨客船(1隻)に関して,適切な運営及び維持管理に必要な予算の確保,乗組員等への十分な取り扱い説明の実施などにより,船舶が良好な状態で継続的に使用できるようにすること。
ア マーシャルは,5つの単独島と29の環礁島が広範囲に点在する島嶼国であり,貨物及び旅客の海上輸送は,同国国民の生命線であることから,首都と離島部を結び付ける定期ルートの確保は重要な課題の一つである。また,海上輸送が離島住民にとって唯一の現金収入源であるコプラ(ココヤシ果実の胚乳を乾燥したもの)の輸送手段であることから,離島振興の面でも必要性が高い。
イ 一方で,マーシャル諸島海運公社が保有している貨客船3隻のうち,1隻は老朽化による故障等により国内5ルート(北部・中央など)への運航回数が減少し,乗船希望者が定員を超過するなどして,安全な運航に支障をきたす事態となっているほか,運航回数の減少と比例してコプラの輸送量が減少するなど離島住民の生活にも大きな影響を与えている。また,主に建設資材や建設重機等の重量貨物の輸送に使用されていた上陸用舟艇型貨客船(1隻)が事故により航行不能となり,重量貨物の輸送手段がない状態であり,緊急に代替船が必要とされている。なお,債務持続性等の観点から,円借款での実施は難しい。
ア マーシャル諸島海運公社の旅客及び貨物の輸送実績を検討し,計画船に必要な輸送能力を算定し,計画船の規模を決定した。
イ 貨客船及び上陸用舟艇型貨客船は,水抵抗を最小限にすべく船体形状を最適化し,プロペラは効率の良い低回転大直径とし,燃費効率を向上させる設計とした。また,船舶の耐久性を高めるため,計画船の機関室内冷却海水鋼管は,内面をプラスチック被覆して,海水による鋼管の腐蝕を防止する設計とした。
ウ 計画船では,故障してから開放修理するのではなく,故障していなくとも定期的に開放点検する予防的保守管理体制を構築し,故障の減少,機器の長寿命を期することとした。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア 新規貨客船の整備により,年間運航日数が166日/年(2010年)から184日/年(2016年目標)に回復することで,同国の生命線である貨物及び旅客の海上輸送が定期的に行われ,安定的な輸送力が確保される。
イ また,同国の貴重な外貨収入源であるコプラの輸送量が3,969トン/年(2010年)から4,600トン/年(2016年目標)に増加し,離島住民の現金収入の増加が期待できる。
ウ 新規上陸用舟艇型貨客船の整備により,建設資材や建設重機等の通常の貨客船では輸送が困難な重量貨物等の輸送能力の回復が期待できる。
エ マーシャルは国際選挙・決議等で我が国の立場を支持する大洋州地域における重要なパートナーである。また,我が国は2009年5月の第5回太平洋・島サミットにおいて,「環境・気候変動」,「人間の安全保障の視点を踏まえた脆弱性の克服」,「人的交流の強化」の3つの柱を中心に支援を実施していくことを表明しており,本件支援は同支援策の一環として,同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。
(1)マーシャル政府からの要請書
(2)JICAの準備調査報告書