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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成24年7月15日
評価責任者:国別開発協力第二課長 德田修一

1.案件名

(1)供与国名

 ハイチ共和国

(2)案件名

 南東県ジャクメル病院整備計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,2008年8,9月のハリケーン及び2010年1月の大地震により大きな被害を受けたジャクメル病院に対して,施設建設及び機材整備を行うものである。同病院は,南東県唯一の2次医療施設(レファレル病院)であり,本事業実施によりレファレル病院としての機能回復を図り,地域保健医療サービスを改善させることを目的としている。供与限度額は13億3,300万円。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア ハイチ政府によって,本計画により整備される病院施設の運営に関し,必要な要員の人件費等の予算確保が適切に行われ,維持管理が適切且つ継続的に実施されること。

イ 治安情勢・政治情勢が悪化しないこと。

2.無償資金協力の必要性

(1)必要性

ア ハイチ共和国は西半球の最貧国(LDC)であり,我が国は従来から貧困対策を中心に支援を行ってきていたが,2010年1月に発生した大地震により死者約31万人を超える被害を受け,被害総額は2009年の同国GDPの約120%に相当する約78億ドルに達したことを受け,我が国は同年3月にニューヨークで開催されたハイチ支援国会合にて約1億ドルの支援を表明したほか,国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)に自衛隊施設部隊を派遣するなど,復旧・復興支援を行ってきている。

イ 南東県ジャクメル市に位置する対象病院は,2008年のハリケーン及び前述の大地震によって多くの施設が損壊し,ハイチ公共事業省により「要取壊し」または「要改修」の判定を受けた。同大地震後は仮設病棟やテントを産科病棟や分娩室として使用しており,病院機能が縮小・分散して,病院職員や患者に大きな負担が強いられている。また2010年10月以降,ハイチではコレラが流行し,全国で44万人以上が感染,6,000人以上が死亡するなど,衛生環境の改善が急務となっている。

ウ 住民約51万人を有する南東県では,自然災害時や感染症の流行時にも多くの傷病者を受け入れ,必要な保健医療サービスを提供できる地方の拠点病院の整備が喫緊の課題となっている。レファレル病院である同病院の施設水準は,ハイチ保健・国民省が定めるガイドラインの基準に達しておらず,安全かつ機能的な施設を整備し,同県において質の高い保健医療サービスを提供できるようにする必要がある。ハイチ政府は同病院の中核となる周産期及び中央診療棟の建設とそれに付随する医療機材等の調達に必要な資金について,我が国に対し無償資金協力を要請してきたものである。

(2)効率性

ア 病院全体の再建には最低8,000平方メートルの施設建設が必要であったため,カナダ赤十字と再建施設及び機材を分担することにより,我が国のコスト縮減を図った。

(3)有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

ア 本件施設(周産期・中央診療棟)が建設されることにより,2017年までに手術数が年間約1,000件(2010年は同約600件),X線検査数が年間約7,500件(2010年は同約4,500件),小児科の入院患者数が年間約700名(2010年は同約320名),分娩件数は年間約1,500件(2011年は同約1,200件)を実施することが可能となり,現状から増加することが期待される。また,手術など有料診療の増加により,病院の収入も増加する。

イ 南東県唯一の2次医療施設の環境が改善されることにより,ハイチ保健・国民省の2次病院ガイドラインにおける施設充実度が向上することを含め,南東県における保健医療サービスの質が向上する。

ウ 耐震性向上により建物の安全性が確保され,災害時でも病院機能が十分発揮できる。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)ハイチ共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

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