評価年月日 平成24年10月31日
評価責任者:国別開発協力第三課長 貴島善子
エチオピア連邦民主共和国
南部諸民族州小中学校建設計画
本計画は,エチオピア連邦民主共和国で三番目に人口の多い南部諸民族州において,教育を受ける機会の拡大と,生徒の就学環境改善を目的として,小学校11校72教室及び中学校10校204教室を整備するものである。供与額は13億1,000万円であり,合計276教室を建設し,学校家具・教育機材の供与を行う。
以下の事項がエチオピア連邦民主共和国政府により実施される必要がある。
ア 本計画開始前に,建設予定地における地下及び地上障害物の除去,門,囲い塀,守衛小屋の整備,電気及び給水設備接続工事,水飲み場整備,遠隔教育カリキュラム用機材整備を行うこと。
イ 関連活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。
ウ 本計画により建設された建物の再塗装や光熱費の負担等,維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
ア エチオピアは,2010/11年~2014/15年の第4次教育セクター開発計画(ESDP-IV)の下,2015年までの初等教育と2020年までの前期中等教育(9~10学年)の完全普及を目指し,初等(1~8学年)及び中等(9~12学年)教育機会の拡充及び教育の質の向上に取り組んできている。その結果,エチオピアの初等教育就学率は41.8%(1997/98年)から96.4%(2009/10年)に改善した。しかし,中等教育就学率は同期間に8.8%から23.7%と改善してはいるものの,その内訳は前期中等(第9~10学年)で38.4%,後期中等(第11~12学年)は8.1%となっており,進学率は未だ低い水準に留まっている。また,就学における地域格差及び男女間格差は未だ顕著である上に,初等教育の生徒数が近年急激に増加した結果,教室数の不足,教室の過密化,質の高い教員の不足,中等教育へのアクセス等の問題が顕在化している。
イ 本計画対象地域である南部諸民族州では,2010/11年に前期初等教育(第1~4学年)の就学率は122.9%に達する(留年の生徒含む)。一方,後期初等教育(第5~8学年)では73.8%に留まった。また,前期中等教育就学率は35.5%,同後期の就学率は5.9%であった。同州は,初等教育の1教室あたりの生徒数を50名と定めているが,実際の1教室当たりの生徒数(二部制)は94人である。さらに,同州内の中等教育は,1教室当たりの生徒数(二部制)は165人である。このように,エチオピアにとって後期初等教育及び中等教育機会拡充は重要かつ早急な対策が必要な課題であるが,同国の厳しい財政状況から,同国自身では生徒の受入可能数の増大を通じて教育機会の拡充という課題に迅速に対応できないため,我が国に対し無償資金協力を要請したものである。
本計画では,先方政府の要請及び協力準備調査に基づき,現地のニーズに合った計画対象タイプ・対象校の選定,施設計画内容・規模とした。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア 現在の前期初等教育のみ行っている初等学校11校において,後期初等教育のために72教室を増設する。これにより,良好な教室で学習できる児童数が7,200名増える。
イ 農村部において中学校6校76教室を整備することにより,対象地域における収容生徒数が6,080人増加する。都市部においても中等学校4校126教室を整備することにより,良好な教室で学習できる児童数が10,240名増加する。
ウ 我が国がTICAD IVで表明した教育分野のコミットメント「小中学校1,000校(5,500教室)を建設」の達成(本年分を含む)に貢献する。
(1)エチオピア連邦民主共和国政府からの要請書
(2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)