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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成25年2月12日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正

1.案件名

1-1.供与国名

 カンボジア王国

1-2.案件名

 シハヌーク州病院整備計画

1-3.目的・事業内容

 プレアシハヌーク州最高レベルの公的病院であるシハヌーク州病院に対し,基礎的な医療サービスを提供する上で必要となる施設及び機材を整備し,これにより同州の医療サービス供給体制の整備と質の向上を図り,同州及び周辺住民の健康に寄与することを目的としており,供与限度額は13.21億円である。

1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 本事業は既存病院敷地内での施設の建て替え工事と医療機材の整備を行うものであり,国指定の保護地域等の「影響を受けやすい地域又はその周辺」に該当せず,自然・社会環境に及ぼす望ましくない影響は最小限と想定される。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)カンボジアは1970年代からの内戦の影響で医療従事者数が激減し,医療機材や施設が破壊され,保健システム全体が壊滅的打撃を受けた。内戦終結後,多数のドナーが保健分野を支援し,特定疾病に対する予防ケアが集中的に実施されてきたが,依然として病院の保健サービス提供体制は脆弱であり,特に地方においては病院内で基本的な医療機器等が整備されていない。

(2)カンボジア保健省は,病院をレベルごとに区分して必要となる標準医療機材リストをガイドラインとして定め,これに基づいた整備を進めている。本事業の対象となるシハヌーク州病院は,人口約19万人のプレアシハヌーク州における最高レベルの病院であり,唯一緊急搬送が可能。しかし,1964年の完成後,雨漏りや床の損傷等の施設老朽化に加え,医療機材の不足・老朽化が激しい。更に,近年の人口増加により病院利用者数も急増し,救急・ICUの病床占有率は135%を超えている。このように,適切な医療サービスを提供するための体制構築は喫緊の課題となっている。

(3)シハヌークビルは,我が国の支援により開発が進む国内唯一の大水深の国際港や経済特区が位置し,首都プノンペンを結ぶ鉄道,電力・通信設備の整備も進み,投資環境が整備されつつあるが,地域の医療サービス提供体制が不十分であることは発展のネックになり得る。

2-2.効率性

(1)本計画の実施に当たっては,プレアシハヌーク州の医療事情,シハヌーク州病院の抱えている課題等の調査結果を加味した上で,保健省のガイドラインに準拠した計画とする。

(2)病床規模は現状の100床から,将来の人口増加を加味して130床とし,さらなる増床にも配慮した計画とする。

(3)エレベータ,スロープが必要となる多層階は避け,一部事務管理部門を除いて平屋建てとする。また,自然通風・採光を最大限活用するとともに,空調を行う部屋は断熱を施す等,省エネに配慮する。

(4)建築的構造,工法,施工の標準化を徹底し,施工品質の確保と建設コストの低減を図る。また,建築基準法,構造基準,消防法,環境法など現地基準にない安全上重要な事項は日本の基準を参考にし,かつ過度にならないよう留意した設計とする。

(5)病院の活動内容との整合を図り,適切なグレードの機材選定を行い,合理的かつ持続可能な機材の維持運営を可能とし,かつ既存機材や他ドナーからの支援機材との重複を避けた機材計画とする。

(6)実施中の技術協力プロジェクトにおいて医療機材の維持管理体制及び能力向上を行っており,本計画で整備される医療機材のメンテナンス体制強化を支援する。また完工後は臨床検査技師等の青年海外協力隊の派遣による機材の活用支援等についても検討する。

2-3.有効性

(1)シハヌーク州病院における医療サービスの向上により,これまで対応が不可能であった患者の受入れ・治療が可能となるなど,州最高レベルの病院としての医療サービス体制の適正化に貢献する。

(2)シハヌーク州病院において,医療従事者のモチベーション向上及び専門性の高い医療従事者の雇用促進に資する。

(3)投資環境整備が進むシハヌークビルに保健省のガイドラインに準拠した最高レベルの病院が整備されることにより,貧困層を含む地域住民が首都の病院と同等の治療を同病院で受けることができるようになり,同州及び周辺住民の健康に寄与するとともに,企業進出を促し地域の経済発展にも寄与する。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)カンボジア王国政府からの要請書

(2)JICAの準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)

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