評価年月日 平成24年11月15日
評価責任者:国別開発協力第2課アフガニスタン支援室長 原 圭一
アフガニスタン・イスラム共和国
「ナンガルハール農村インフラ改善計画」
帰還民が人口の半分以上を占めるナンガルハール県ベスード郡及びスルフロッド郡において,教育施設,保健医療施設及び農村道路といったコミュニティレベルの基礎的インフラを改善することにより,帰還民及び受入コミュニティ住民の生活環境の改善に寄与するもの。供与額は10億7,600万円。
ア.円滑な事業実施のため,ナンガルハール県の治安・政治情勢が著しく悪化しないこと。
イ.案件実施に際し,アフガニスタン政府負担事項が実施され,案件完了後も同政府により適切な維持管理がなされること。
ア.アフガニスタンでは人口の8割が農村に居住しているが,長期に亘る内戦及びその後の維持管理不足により社会経済インフラは荒廃しており,同国の安定と自立的・持続的発展のためには,農村コミュニティの開発が重要な課題の一つである。このような背景から2002年以降,農村復興開発省(MRRD)は,世界銀行をはじめとする国際社会の支援の下,各村落に自治組織であるコミュニティ開発委員会(CDC:Community Development Committee)を設置し,その組織強化と住民の要望に基づく道路,給水,電力,灌漑整備等のコミュニティ開発事業を実施する国家連帯計画(NSP:National Solidarity Program)を全国規模で展開しているが,コミュニティ開発事業を拡大していくためには国際社会による一層の支援が必要な状況である。
イ.また同国には,約615万人の帰還民(国外から帰還した難民約570万人,国内避難民約45万人)が存在するとされており,特にパキスタンとの国境を接する同国東部のナンガルハール県は,パキスタンからの帰還民が集中し,帰還民の割合は人口の半分以上を占める状況にある。帰還民定住の遅滞及び帰還民受け入れによるコミュニティの負担増加は,同国の政情不安,復興及び経済発展の遅滞要因であることから,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はアフガニスタン難民帰還省と共同で難民の帰還促進のための支援事業及び帰国初期段階の生計維持支援などの人道支援を実施しているが,人道支援と併せ,コミュニティの基礎的インフラの改善等,社会経済基盤の整備・拡大が重要である。
ウ.同国では,「アフガニスタン国家開発戦略(ANDS)」における長期的な方針として,地方のコミュニティの統合を促進すると共に,地方のコミュニティの社会的,経済的および政治的な福祉の増進を図ることを目標として掲げており,その実現に必要な学校,保健医療施設,道路等の生活基礎インフラの整備を行う本件を実施する意義は大きい。また難民問題は,2012年5月にジュネーブで開催されたアフガニスタン難民に関する国際会議でも全ての国家優先プログラム(NPP)において配慮されるべき分野横断的重要課題として認識されており,難民問題の解決の観点からも,農村開発を通じて帰還民の定着にも資する本件を実施する意義は大きい。
我が国の技術協力「ナンガルハール州帰還民支援プロジェクト」により,ナンガルハール県におけるコミュニティの自立的な意思決定体制,維持管理体制等が整備されたことを確認した上で,コミュニティ開発に対する今次無償資金協力の効果が発現するよう効率的な供与内容とした。
本計画の実施により,以下のような効果が期待される。
ア.ナンガルハール県ベスード郡,スルフロッド郡における11村落の教育,医療サービスの充実及び農村道路改修による同施設等へのアクセス改善により,帰還民及び受入コミュニティ住民約17万人の生活環境が改善する。
イ.UNHCRによる生計維持支援などの人道支援と併せ,コミュニティへの帰還民の定住が促進される。
(1)JICAの概略設計概要書
(2)アフガニスタン・イスラム共和国からの要請書