評価年月日 平成25年2月5日
評価責任者:国別開発協力第二課アフガニスタン支援室長 原 圭一
アフガニスタン・イスラム共和国
「デサブ南地区給水施設整備計画」
アフガニスタン政府が,新都市開発計画を進めているデサブ南地区の初期開発地区(パーセル1)において,必要な取水施設及び送配水施設の整備を行うことにより,同地区に必要な水道水の確保を図り,新都市開発事業の推進に寄与する。供与額は25億6,100万円。
ア 円滑な事業実施のため,今後アフガニスタンの政情・治安状況が著しく悪化しないこと。
イ 想定外の自然災害や物価高騰が発生しないこと。
ウ 水源の水量が減少しないこと。
エ 民間主導の開発事業を含め,パーセル1の開発事業全体が順調に進捗すること。
オ 案件実施に際し,アフガニスタン側負担事項が実施され,案件完了後もアフガニスタン側で適切な維持管理がなされること。
ア アフガニスタンの首都カブールは,2002年以降,年4%以上のペースで人口が急増している。しかし,カブール市は盆地という地形的制約等から都市の拡張が難しく,カブール市及び周辺地域は,水供給の逼迫,衛生状態の悪化,交通渋滞,郊外の無秩序な開発等の様々な問題に直面していることから,効率的な都市開発が課題となっている。
イ このため,アフガニスタン政府は,「カブール首都圏都市計画マスタープラン」の実施を閣議決定し,カブール市北の郊外に位置するデサブ地域において,新都市開発計画を進めている。同計画は,基盤インフラ(道路,給水,電力等)を公共事業として整備し,民間開発業者が商業地・住宅地の整備や不動産販売等を行う官民連携で進められる。アフガニスタン政府は,デサブ地域の初期開発地区(約5,000ヘクタール)のパーセル1(約830ヘクタール,計画予定住民数42,000人)において,具体的な開発事業に着手しており,民間開発業者との契約や土地所有者との連携にかかる意見交換等が進行中である。
ウ パーセル1における新都市開発事業を着実に推進するため,同地区の基盤インフラを公共事業として整備する必要があり,電力供給については,アフガニスタン政府との協議を踏まえ,アジア開発銀行(ADB)が支援を検討している。
エ このような中,パーセル1における給水について,必要な取水施設及び送配水施設を整備することにより,同地区に必要な水道水を確保し,デサブ新都市開発の推進に資することを目的として,アフガニスタン政府から我が国に対し,無償資金協力の要請があった。
オ なお,アフガニスタン政府は,2008年にとりまとめた「アフガニスタン国家開発戦略(ANDS)」の柱の一つである「インフラ及び天然資源開発」において,「都市開発」を重要課題として掲げている。また,国家優先プログラム(NPP)の「都市管理支援プログラム」の中で,給水事業を含むデサブ地域の都市開発を,重点プロジェクトとして位置付けている。
ア 技術協力プロジェクト「カブール首都圏開発計画推進プロジェクト」(平成20年度~。実施中。),開発計画調査型技術協力「カブール首都圏開発計画調査」(平成17~19年度)及び「カブール首都圏緊急水資源開発プロジェクト」(平成20~22年度)の進捗状況及び成果を活用するとともに,アフガニスタン側との協議を通じ,必要性及び緊急性の高い内容に限定することにより,アフガニスタン側の運営・維持管理体制等に適した供与内容とした。
イ 下記(3)イ及びウのとおり,本件の対象地区にとどまらず,カブール首都圏域の投資促進及び経済発展並びに給水システムに係る技術的知識及び能力向上に資する効率性が期待される計画である。
本計画の実施により,以下のような効果が期待される。
ア パーセル1の計画予定住民数42,000人に対応できる量の生活用水を安定して供給できる給水施設が整備され,計画的な都市給水が可能となる。
イ 都市開発に必要な基盤インフラが整備されることにより,パーセル1の開発が促進されるとともに,同地区をモデル地区として,その他の地区の民間開発が促進され,将来的にはカブール首都圏域の投資促進及び経済発展に資することが期待される。
ウ カブール市及び周辺地域における給水システムにかかる技術的知識及び能力の向上に資する。
(1)JICAの概略設計概要資料
(2)カブール首都圏開発計画調査最終報告書
(3)カブール首都圏開発計画推進プロジェクトデサブ南初期開発地区地下水開発サブ・プロジェクト ファイナル・レポート
(4)アフガニスタン政府からの要請書