評価年月日 平成25年1月21日
評価責任者:国別開発協力第2課アフガニスタン支援室長 原 圭一
アフガニスタン・イスラム共和国
「カブール県,バーミヤン県及びカピサ県における灌漑施設改修計画」
アフガニスタンにおける最大の穀物消費地域であるカブール県とその近隣県であるカピサ県,バーミヤン県における灌漑施設の整備・改修,水エネルギー省の能力向上及び対象地域農家の生計向上支援を実施することにより,同国の食料安全保障を改善し,持続的・自立的発展に貢献する。
供与額は21億3,700万円。
ア 円滑な事業実施のため,カブール県,バーミヤン県及びカピサ県の治安・政治情勢が著しく悪化しないこと。
イ 案件実施に際し,アフガニスタン政府負担事項が実施され,案件完了後も同政府により適切な維持管理がなされること。
ア アフガニスタンは乾燥した大陸性気候に属し,年平均降雨量は約300ミリメートル程度と比較的少ないが,ヒンズークシ山脈への降雪により潜在的には豊富な水資源(表流水57億立方メートル,地下水18億立方メートル)を有している。このため主要な水資源は,3月に始まる融雪によって増加し,5月にピークを迎えた後,6月から7月まで継続する。しかしながら,同国の主要な作物栽培期間は4月下旬から9月頃までであり,河川流量のピークと作物の必要水量のピークの間にずれがあるため,8月以降は水不足に陥る状況となる。こうしたずれを解消し,水資源を有効に活用するためには,灌漑施設の整備が極めて重要であるが,長年に亘る戦乱による荒廃や維持管理の放棄及び近年頻発する洪水被害により,農地面積320万ヘクタールの内,灌漑施設を有する農地は約100万ヘクタール程度であり,かつその多くは非効率な灌漑が行われている状況である。
イ そのため,主要穀物である小麦は,近年多発する干ばつの影響もあり,6割程度の自給率(2011年では約520万トンの小麦需要に対し生産は約330万トンと,約190万トンの需給ギャップが存在。)しかなく,近隣国であるパキスタン,ウズベキスタン,イラン等からの輸入や食糧援助に頼らざるを得ないことから,同国の食料安全保障の確保は厳しい状況にある。かかる背景から,我が国は2010年度以降,FAO(国際連合食糧農業機関)と連携し,灌漑施設の改修及び高品質小麦種子の配布を実施し,同国の食糧生産の向上を支援している。
ウ 近年,カブール首都圏は,首都圏開発や難民の帰還により,人口増加が著しく,今後もこの傾向は続くことが予想される。今後の首都圏の人口増加及び都市開発にかんがみると,首都圏への食料供給体制の確保は不可欠である。かかる背景からアフガニスタン政府はFAOと協力し,アフガニスタン政府の重点課題である「農業生産拡大及び生産性向上」に資することを目的として,カブール県,バーミヤン県及びカピサ県における灌漑施設整備,水エネルギー省の能力強化,農家の生計向上支援を実施するための無償資金協力を我が国に対し要請した。
FAOによる要請書を精査の上,アフガニスタン側が十分運営・維持管理可能な供与内容にするとともに,我が方アフガニスタン大使館及びJICA現地事務所等とも連携・調整することを通じ,より高い援助効果が得られる内容とした。
本計画の実施により,以下の効果が期待される。
ア カブール県,カピサ県及びバーミヤン県対象地域の灌漑施設改修及び水資源管理に関する技術指導により,約25,000ヘクタールの農地の生産性が向上するとともに,生計向上支援により約70,000戸420,000人の農家の生活環境が向上する。
イ 水・エネルギー省職員の計画・実施・管理能力が強化されることで,同省による持続的・自立的な水資源開発に貢献する。
ウ アフガニスタンの食料安全保障が改善し,同国の持続的・自立的発展に貢献する。
FAOによる要請書