評価年月日 平成23年3月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 清水茂夫
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
南北高速道路建設計画(ダナン-クアンガイ間)(第一期)
(3)目的・事業内容
ベトナム南北高速道路網のうち,中部のダナン-クアンガイ間において,高速道路(片側2車線,全長131.5キロメートル)を建設することにより,ベトナム中部地域の物流・生産拠点であるダナン市周辺において増加する交通需要への対応,物流の効率化及び交通渋滞の緩和を図り,もってダナン市を含むベトナム中部地域の経済成長促進・国際競争力強化に寄与するもの。(本案件は,世界銀行との協調融資案件であり,円借款工区はダナン~タムキー間 65キロメートル,世界銀行工区はタムキー~クアンガイ間66.5キロメートルとなっている。)
(ア)主要事業内容
(イ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
159.12億円 | 年1.2% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
(ア)本件に係る環境影響評価報告書は,2008年11月にベトナム天然資源環境省により承認済み。また,線形変更に伴い作成された補足EIA報告書は,2010年10月に承認済み。
(イ)約456ヘクタールの用地取得及び306世帯の住民移転を伴い,同国国内法に則り作成された住民移転計画(RAP)に沿って用地取得が進められる予定。
(ウ)外部要因リスクは特になし。
(1)必要性
(ア)開発ニーズ
ダナン市周辺の交通量は,2003年当時と比較して現在約2.5倍に増加しており,さらに,同市からクワンガイ省の沿岸には,大規模な工業団地が数多く建設中であるため,2020年には交通量が現在の約3倍になるものと見込まれている。そのため,既存の国道では急増する交通需要への対応は難しく,さらに,異なる車種の混在が,道路の劣化,交通事故等の問題を引き起こしている。新規高速道路の建設は,効率性・安全性・快適性を備えた交通サービスの提供を実現するものであり,本計画の対象区間における高速道路建設の必要性は高い。
(イ)我が国の基本政策との関係
2009年7月に改訂した対ベトナム国別援助計画は,1)経済成長促進・国際競争力強化(ビジネス環境整備・民間セクター開発,資源・エネルギー安定供給,都市開発・運輸交通・通信ネットワーク整備),2)社会・生活面の向上と格差是正(基礎社会サービス向上,地方開発・生計向上),3)環境保全(都市環境管理,自然環境保全),4)ガバナンス強化(行財政改革,法整備・司法改革)を重点分野としている。本計画は上記1)に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
既往の高速道路事業の事後評価から,事業効果発現のためには,個別の高速道路の断片的な建設ではなく,国家高速道路計画に基づく支援が重要であるとの教訓を得ている。また,事業完成後の持続性確保の観点からも,計画初期段階から維持管理費等を含む維持管理体制の策定・構築,及び料金徴収計画の慎重な検討が必要であるとの教訓を得ている。これらを踏まえ本計画については,高速道路マスタープランの最優先区間を採り上げている他,維持管理体制の構築及び料金徴収計画策定について,技術協力との連携を通じて強化を図ることにより,案件の効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施により,当該区間の所要時間の短縮(230分から90分(完成2年後・2017年))が見込まれており,これにより旅客・貨物輸送の効率化,及びベトナム中部地域の経済及び社会開発の促進が期待される。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html ),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース
(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。