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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成23年2月22日
評価責任者 国別開発協力第二課長 小野日子

1.案件概要

(1)供与国名
 ウズベキスタン共和国

(2)案件名
 カルシ-テルメズ鉄道電化計画

(3)目的・事業内容

 ウズベキスタン南部山岳地帯のカルシ-テルメズ間の鉄道牽引方式をディーゼル動力から電気動力へ変更することで,今後増加が見込まれる輸送需要への対応を図り,もってウズベキスタン及びアフガニスタンを含む周辺国の社会経済発展に寄与するもの。

(イ)主要事業内容

  • 資機材調達(車両基地,架線設備,変電所,送電線,軌道等)
  • コンサルティングサービス
    (なお,土木工事については先方負担にて実施)

(ロ)供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
180.67億円 年1.20% 30(10)年 一般アンタイド
 (注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

(イ)EIA(環境影響評価):EIA報告書は2010年10月に国家自然保護委員会により承認済み。

(ロ)用地取得及び住民移転:本計画では計34.6ヘクタールの用地取得が必要となり,同国国内法に基づき手続きが進められる。なお,本案件実施による住民移転は生じない。

(ハ)外部要因リスク:特になし。

2.資金協力案件の評価

(1)必要性

(イ)開発ニーズ
 ウズベキスタンにおける鉄道セクターの強化は,特に国家開発戦略である「福祉改善戦略」において,同国南部の生産能力向上及び輸出ルートの構築に資するものとして位置づけられている。近年,同国の急速な経済成長(2009年8.1%)に伴い,本件対象地域である同国南部に向けた貨物輸送需要は2019年までの10年間に約60%と大幅な増加が見込まれている一方で,現行のディーゼル動力牽引方式による鉄道輸送能力では,山岳地帯を含む同国南部における貨物輸送需要に対応できないことから,電気牽引方式を導入することが求められている。また,アジア開発銀行により,ウズベキスタンに隣接するアフガニスタン北部において,昨年11月,ハイラトン-マザリシャリフ間の鉄道敷設工事が完了したことから,アフガニスタン向け物資輸送にも貢献することが期待される。

(ロ)我が国の基本政策との関係
 2006年9月に策定した我が国の対ウズベキスタン国別援助計画においては,(a)市場経済発展と経済・産業振興のための人材育成・制度構築支援,(b)社会セクターの再構築支援,(c)経済インフラの更新・整備,(d)地域内協力の促進を掲げている。本計画は,右4分野のうち,(c)と(d)に合致するものである。

(2)効率性
 本件は,中央アジア域内での輸送網の整備に伴い物流量が増加する中で,通関手続きの円滑化,違法品の輸出入の取締まりの強化を目的とする無償資金協力「国境税関大型貨物用検査機材整備計画」の実施と相互に効率的な実施を図っている。

(3)有効性
 ウズベキスタン南部の山岳地帯に含むカルシ-テルメズを結ぶ区間(約325キロメートル)の鉄道牽引方式をディーゼル動力から電気動力へ変更することを通じて,今後増加が見込まれる輸送需要への対応を図り,同国及び周辺国の社会経済発展に寄与することが期待される(2009年の実績値と比較して,完成2年後(2019年)には,所要時間が大幅に短縮され(旅客:上り8.6時間 下り7.7時間→上り,下りともに4.7時間,貨物:上り9.4時間 下り8.9時間→上り,下りともに5.6時間),旅客・貨物輸送量も増加(カルシ-クムクルガン間:旅客28千人キロ→35千人キロ,貨物3,620千トンキロ→9,379千トンキロ。クムクルガン-テルメズ間:旅客44千人キロ→46千人キロ,貨物1,490千トンキロ→2,742千トンキロ)。)。また,物流ネットワークの効率化,広範な経済開発の促進,アフガニスタンを含む地域の安定,民間セクターの活性化等が期待される。

3.事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

 要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/他のサイトへ),その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html他のサイトへ)及び事業事前評価表,(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html他のサイトへ)を参照。
 なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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