評価年月日 平24年1月19日
評価責任者 国別開発協力第三課長 堤 尚広
(1)供与国名
チュニジア共和国
(2)案件名
ガベス-メドニン間マグレブ横断道路整備計画
(3)目的・事業内容
北アフリカ5か国を結ぶマグレブ横断道路(高速道路)の一区間であるガベス-メドニン間(約84キロメートル)を整備することにより,物流輸送能力の増強及び沿線地域住民の経済・社会的サービスへのアクセス向上を図るもの。
(ア)主要事業内容
(イ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
150.84億円 | 0.95% | 20(6)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
ア 本件に係る環境影響評価報告書は,2010年3月にチュニジア国家環境保護局が評価を終了しており,国際協力事業の所管官庁である開発・国際協力省から本件実施に関する承認が出されている。
イ 本事業は,私有地846ヘクタール及び公用地43ヘクタールの用地取得を伴い,同国国内手続きに沿って取得が進められる。なお,住民移転は,1世帯9人の住民移転が想定されており,国内法に従って再取得価格にて補償される。
ウ 外部要因リスクは特になし。
(1)必要性
ア 開発ニーズ
チュニジアは,輸出産業の育成や民間投資誘致を促す経済基盤整備を進め,持続的成長を確保することや,都市と地方(特に貧困層の多い南部)の格差是正を重要な開発課題としている。また,同国は,第11次5か年社会経済開発計画(2007~2011年)において,高速道路整備を,物流・人の移動の効率化を実現し産業競争力を強化するためのバック・ボーンと位置づけ重要視している。
現在,当該区間をつないでいる国道1号線は,同国における重要な幹線道路であるものの,大型トラック等の商業車をはじめとする交通量の増加により,交通事故の発生や,渋滞等による輸送時間の増加が懸念されている。本件を実施することにより,チュニジア南部はもとより,北アフリカ諸国への貿易・流通の一層の活性化及び輸送の効率化が見込まれており,そのニーズは高い。
イ 我が国の基本政策との関係
我が国は,昨年5月に行われたG8ドーヴィル・サミットにおいて,チュニジアを含む移行期にある中東・北アフリカ諸国に対し,1)格差是正と安定化を含む,公正な政治・行政運営,2)人づくり,3)雇用促進・産業育成を中心に支援を行っていくことを表明した。本件計画は,開発が進んでいないチュニジア南部を対象とすることにより地域間格差の是正を促すとともに,チュニジア国内のみならず,マグレブ横断道路がつなぐ北アフリカ諸国への貿易・流通の一層の活性化を生み,同国の産業育成にも資するものである。また,本案件は,TICAD IV横浜行動計画に掲げられている「広域運輸インフラ」整備を具体化するものでもある。
(2)効率性
実施機関である高速道路会社(STA)は,マグレブ横断道路のエルジェム-スファックス間高速道路建設計画(2001年度円借款案件,2008年開通)を含め,高速道路整備及び運営に関する経験と実績を有している。事業実施の際は,本案件を総括して管理するProject Implementation Unit (PIU)をSTA内部に設置し,事業の円滑な実施に努めることとしている。我が国としても,本案件のモニタリングを行いながら,必要に応じて技術協力(研修,専門家派遣等)による支援を検討する。
(3)有効性
本計画の実施により,増大する道路輸送需要への対応及び輸送の効率化が図られる(事業完成2年後(2017年)の見込みは,当該区間年平均日交通量:約12千台/日,短縮所要時間の貨幣換算価値:17.5百万チュニジア・ディナール/年(1米ドル=約1.5チュニジア・ディナール))。また,当該地域住民の経済・社会サービスへのアクセス向上に伴い,生活環境の改善及び貿易・流通の活性化も期待される。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html ),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース
(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。