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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成23年11月4日

評価責任者 国別開発協力第三課長 堤 尚広

1.案件概要

(1)供与国名
 セルビア共和国

(2)案件名
 ニコラ・テスラ火力発電所排煙脱硫装置建設計画

(3)目的・事業内容

 セルビア最大の火力発電所であるニコラ・テスラ火力発電所(合計発電容量1,649メガワット)に排煙脱硫装置を設置することにより,大気汚染物質(SO2及び煤塵)の削減を図り,環境改善及び持続可能な発展に貢献するもの。

(ア)主要事業内容

  • 排煙脱硫装置
  • 関連設備(石灰石供給設備,石膏脱水設備等)
  • コンサルティングサービス

(イ)供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
282.52億円 0.6% 15(5)年 一般アンタイド
 (注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア EIA(環境影響評価):環境に影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。EIA報告書は,セルビア国内法上作成が義務付けられていない。

イ 土地収用及び住民移転:既存敷地内で実施されるため,用地取得及び住民移転を伴わない。

ウ 外部要因リスク:特になし。

2.資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ
 セルビアでは,持続可能な開発に向けた電力の安定供給と大気汚染対策が重要な課題となっている。特に,石炭火力発電は同国の主要な電力供給源であるが,燃料となる国産の石炭は品位が低い上に,環境設備が設置されていないため,石炭火力発電所から国内の環境基準を上回る大気汚染物質が排出されている。また,2006年に南東欧エネルギー共同体条約に加盟したことで,同国には,火力発電所からのSO2,NOX,煤塵の排出量をEU基準まで下げることが義務付けられている。これが達成されなければ,発電所閉鎖の可能性があることからも,排煙脱硫装置の設置を通じた大気汚染物質の削減を早期に図ることが必要となっている。

イ 我が国の基本政策との関係

 我が国は,セルビアに対し,1)市場経済化,2)医療・教育,3)環境保全 を重点分野に据えて経済協力を行っている。本計画は,火力発電所から排出される大気汚染物質の削減に向けたセルビアの取組を支援するものであり,上記3)の重点分野「環境保全」に合致する支援である。また,本計画は,ODA大綱の重点課題の1つである「地球規模課題の問題への取組」にも大きく貢献するものである。

(2)効率性
 脱硫方式は,世界的に最も普及しており,信頼性も高い湿式石灰石石膏法を採用している。また,最新の技術を適用し,設備の小型化に努めることでコストの削減を図っている。更に,適切な工期を設定し,工期の短縮を図ることでも案件の効率性を高めている。

(3)有効性
 本計画を実施することで,大気汚染物質の削減が期待される(SO2排出量:約2,700ミリグラム/ノルマル立米以上(2005年~2009年の最高値)→200ミリグラム/ノルマル立米以下(2019年:完成2年後),煤塵排出量:約430ミリグラム/ノルマル立米(2005年~2009年の最高値)→30ミリグラム/ノルマル立米以下(2019年:完成2年後))。また,周辺住民の生活環境の向上や安定的な電力供給による経済発展にも貢献することが期待される。

3.参考情報

(1)事前評価に用いた資料

(2)案件に関する情報は以下より入手可能。

(3)案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。
http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/after.html他のサイトへ

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