評価年月日 平成23年7月5日
評価責任者:国別開発協力第一課長 清水茂夫
(1)供与国名
インドネシア共和国
(2)案件名
地熱開発促進プログラム
(3)目的・事業内容
再生可能エネルギーである地熱発電により電力供給増強を行い,民生の向上及び投資環境の改善を通じ,インドネシア経済の発展に寄与するもの。
(ア)主要事業内容
(イ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
552.99億円 | 0.3% | 40(10)年 | アンタイド |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
(ア)EIA(環境影響評価):ルムットバライ地熱発電計画(II)のEIA報告書は2008年8月に承認済み。フルライス地熱発電計画(E/S)のEIA報告書は2011年7月までに承認される見込み。トゥレフ地熱発電計画(E/S)の環境管理方針や環境モニタリング方針は2010年3月に承認済み。
(イ)用地取得及び住民移転:ルムットバライ地熱発電計画(II)は,約102ヘクタールの保有林の転用を伴い,同国国内法に従って転用手続きが進められ,住民移転は発生しない。フルライス地熱発電計画(E/S)の用地取得等は,エンジニアリング・サービスの中で検討が行われ,住民移転は発生しない見込み。トゥレフ地熱発電計画(E/S)は,最大約7ヘクタールの用地取得を伴い,同国国内法に従って取得が進められる予定であり,住民移転は発生しない見込み。
(ウ)外部要因リスク:特になし。
(1)必要性
(ア)開発ニーズ
インドネシアにおける電力ピーク需要25,171メガワット(2009年)に対し,現在の電源設備容量は30,230メガワットであり,電源予備率はインドネシア国有電力公社の目標値の35%を大きく下回る20%となっており,逼迫する電力需給への大覆うが喫緊の課題となっている。インドネシアは,電力供給の増強と,再生可能エネルギー開発の促進を含むエネルギーの多様化を併行して進めており,現在1,189メガワットである地熱発電の設備容量の増加を図るため,第二次電源開発計画(2010年~2014年)における10,000メガワットの電源開発では,3,672メガワットを地熱発電により賄う見込みとなっている。本プログラムもこの計画に位置付けられる。
(イ)我が国の基本政策との関係
本プログラムは,電力供給の増強を図り,もって民生の向上,投資環境の改善等を通じた経済発展を図るものであり,国別援助計画の「民間主導の持続的な成長」に資する案件に位置付けられる。また,環境に配慮した再生可能エネルギーであり,温室効果ガスの排出抑制が期待されることから,「気候変動対策に関する2012年までの途上国支援(短期支援)」※として支援を行う。なお,短期支援として実施する際には,国際交渉において我が国の取組を積極的にアピールし,途上国の理解を得るとの観点から,案件形成段階から支援対象国に気候変動案件として検討している旨を明示的に伝えるなど,短期支援に関する広報を一層強化する必要がある点につき留意する。
※我が国は気候変動分野における途上国支援として2009年12月に,「気候変動対策に関する2012年までの途上国支援」を発表。官民あわせて150億ドル,公的資金で約110億ドル規摸の支援を表明している。
(2)効率性
個別の地熱発電計画5件を1つのプログラムとして支援することにより,手続の簡素化及び準備期間の短縮化を図ると共に,案件毎の資金需要に柔軟に対応することで事業の効率化を図る。
(3)有効性
インドネシアは世界最大級(27,000メガワット)の地熱資源を有していると言われており,地熱開発のポテンシャルは高い。本プログラムのうちルムットバライ地熱発電計画(II)の実施により,事業完成2年後の2017年には最大出力110メガワット,設備利用率90%,送電端発電量867.2ギガワット時/年が見込まれている。その他の発電計画については,本件によるエンジニアリング・サービスを経て事業が実施されれば,フルライス地熱発電計画(E/S)で最大出力110メガワット,トゥレフ地熱発電計画(E/S)で最大出力20メガワット等が見込まれており,設備利用率や送電端発電量等は本体事業審査時に設定する。また,同国の電力需給逼迫の緩和及び供給の安定性の改善,同国の投資環境の向上,経済発展に寄与することが期待され,二国間関係の強化が図られる。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html ),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース
(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。