評価年月日 平成24年1月19日
評価責任者:国別開発協力第二課長 徳田修一
(1)供与国名
インド
(2)案件名
デリー高速輸送システム建設計画フェーズ3
(3)目的・事業内容
インドのデリー首都圏において地下鉄及び高架鉄道による高速輸送システム(「デリーメトロ」。総延長約414キロメートル)建設計画のフェーズ3として,4路線4区間(計約103キロメートル)の大量高速輸送システムの建設等を行うもの。
(ア)主要事業内容
1)土木工事(8号線の地下区間17.3キロメートル,全線の軌道部分等)
2)電気・通信・信号関連工事
3)車両調達
4)コンサルティング・サービス
(イ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
1,279.17億円 | 1.40% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
(ア)EIA(環境影響評価)
本件に係る環境影響評価報告書はインド国内法上義務付けられていないが,2011年8月に作成済みである。
(イ)用地取得
約3.6ヘクタールの用地取得及び353世帯1,621人の住民移転を伴い,インドの国内手続きに沿って取得が進められる。
(ウ)外部要因リスク:特になし。
(1)必要性
(ア)開発ニーズ
インドのデリー首都圏の人口は,1991年の942万人から2011年には1675万人に増加しており,さらに2021年には2432万人に達すると見込まれている。それに伴い,自動車登録台数の伸びも著しく,2000年の346万台から2011年には693万台へと急増しており,交通渋滞及び自動車公害が深刻化している。その一方で,用地不足から道路網の拡充が難しく,既存の公共交通であるバスの輸送能力の大幅な向上も困難である。以上の現況から,大容量の公共交通システムの早急な整備が強く求められており,本計画のニーズは大きい。
(イ)我が国の基本政策との関係
2006年6月に策定された「国別援助計画」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(a)経済成長の促進(「経済成長を通じた貧困削減」を追求するためのインフラの整備等),(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大(強固な二国間関係の構築を念頭)を掲げている。本計画は,都市交通システムの整備という観点から,同国のインフラ整備に資する案件として上記(a)に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。また,交通渋滞緩和を通じた都市環境の改善にも資しており,上記(b)に合致する側面も有している。
(2)効率性
効率的な実施及び運営維持管理のためには,財務的に自立した事業実施体制の確立が重要との認識の下,特別目的会社(SPV)を設立して事業実施に当たっており,完成後は同社が運営維持管理に当たることとしている。
(3)有効性
本計画の実施により,デリー首都圏の増加する輸送需要への対応を図り,もって交通混雑の緩和と交通公害減少を通じた地域経済の発展及び都市環境の改善に寄与することが期待される(完成2年後(2022年)見込み:運行数782本/日・片道,乗客輸送量3,800万人・キロメートル/日)。また,インドの経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。