評価年月日 平成24年3月14日
評価責任者 国別開発協力第三課長 堤尚広
(1)供与国名
エジプト・アラブ共和国
(2)案件名
カイロ地下鉄四号線第一期整備計画
(3)目的・事業内容
カイロ都市圏南西部に地下鉄(約17キロメートル)を建設することにより,増加する交通需要への対応と深刻化する交通渋滞の緩和を図り,もって同国経済の発展に寄与するもの。
ア 主要事業内容
コンサルティングサービス
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
327.17億円 | 0.2% | 40(10)年 | 日本タイド (本邦技術活用条件(STEP)) |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
ア EIA(環境影響評価):2010年7月および11月(7月以降に軌道変更が行われた区間に関するもの)にエジプト環境庁(EEAA)が承認済み。
イ 用地取得及び住民移転:本計画の実施は,11世帯及び14店舗の移転を伴うため,エジプト国内法および移転政策枠組みに沿った手続きを実施予定。
ウ 外部要因リスク:特になし。
(1)必要性
ア 開発ニーズ
カイロ都市圏では,都市化の進展による人口の増加,公共交通における過度の道路交通依存,自動車の急速な普及が進んだため,慢性的な交通渋滞が深刻化している。すでに,既存の公共交通(バス,鉄道)の輸送能力は限界に達しており,市内の用地不足のため道路網の大幅な拡大も困難な状況にある。このため,大量公共輸送機能を整備し,交通渋滞の緩和,道路交通依存の軽減を図る本計画のニーズは高い。
イ 我が国の基本政策との関係
我が国は,昨年5月に行われたG8ドーヴィル・サミットにおいて,エジプトを含む移行期にある中東・北アフリカ諸国に対し,1)公正な政治・行政運営,2)人づくり,3)雇用促進・産業育成を中心に支援を行っていくことを表明した。本計画は,競争力のある安定した経済社会への移行を支援するため,効率的なカイロ都市圏の運輸交通体系を構築するものであり,同国の雇用創出や産業育成にも資するものである。
(2)効率性
工期の遅延,事業費の増加を防止する方策を講じるため,本計画の路線内に,寺院などの動かすことのできない地下埋蔵物が存在しないことを事前調査により確認している。また,水道管網や電線網が複雑に埋設され,古代・中世の遺跡に遭遇する可能性もあるカイロの地下鉄建設に最適なトンネル工法として,必要最小限の掘削によりトンネルを建設できるシールド工法を採用することとしている。
(3)有効性
本計画の実施により,ギザのピラミッドや大エジプト博物館(建設中)と市内中心部を結ぶ約17キロメートルの地下鉄が開通し,交通渋滞の緩和,移動の定時性確保が期待される(完成時(2020年)見込み:運行数396本/日,乗客輸送量322.8万人・キロメートル/日)。これにより,観光都市としての魅力が高まり,観光業を中心とした外貨収入拡大・雇用創出が見込まれ,エジプトの経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表,(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。