評価年月日 平成23年3月15日
評価責任者:国別開発協力第二課長 小野日子
(1)供与国名
バングラデシュ人民共和国
(2)案件名
クルナ水供給計画
(3)目的・事業内容
バングラデシュ第3の都市であるクルナ市において,安全かつ安定的な上水道サービスを提供するため,上水道施設の整備を行うもの。
(ア)主要事業内容
(イ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
157.29億円 | 0.01% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
(ア)EIA(環境影響評価): 初期環境影響評価報告書は,2010年10月に環境森林省環境局の承認済み。環境影響評価報告書は2011年2月承認済み。
(イ)用地取得及び住民移転:本計画は用地取得(約30ヘクタール)を伴うが,用地取得はバングラデシュの国内手続きに沿って進められ,被影響住民に対しては再取得費用で補償されることが確認されている。住民移転は発生しない。
(ウ)外部要因リスク:特になし
(1)必要性
(ア)開発ニーズ
安全な水と衛生は,バングラデシュの国家開発戦略の最上位にある貧困削減文書(PRSP)及び改訂版第二次PRSP(NSAPR-II)(FY2009-FY2011)にて,優先的課題の一つとして掲げられている。またバングラデシュは国連ミレニアム開発目標の達成のため,2011年までの全国民による安全な水へのアクセスを目標としており,特に都市部では水の供給量確保と効率的なサービス提供システムの構築が必要として,主要4都市(ダッカ・チッタゴン・クルナ・ラジシャヒ)における上水道普及率を2025年に90%とする目標が設定されている(2005年時点での都市部全体(主要都市及び中規模都市)における上水道普及率は39%にとどまっている。)。クルナはバングラデシュ第三の都市であるが,大規模上水道施設の整備が未だなされておらず,水道普及率が低いことから,同市の水需要を満たすためにも,本件支援へのニーズは高い。
(イ)我が国の基本政策との関係
2006年5月策定の対バングラデシュ「国別援助計画」においては,今後のODAの重点目標として,バングラデシュによる貧困削減努力を支援するため,1)経済成長の持続(「経済成長を通じた貧困削減」を追求するためのインフラの整備等),2)社会開発と人間の安全保障及び3)ガバナンス(貧困削減を効果的・効率的に進めるための不可欠の条件)を掲げている。本件計画は,クルナ地域の住民に安全な水を供給する点で,「都市環境」という開発課題に合致しており,上述2)の重点目標に対応した支援となっている。また,我が国は2009年12月に気候変動対策に関する2012年までの途上国支援を発表しており,その中で気候変動の悪影響に脆弱な途上国において防災対策,高温・干ばつ・洪水等の自然災害の激甚化への対策支援を謳っているところ,本計画は同内容に合致する支援となっている。
(ウ)効率性
本件は,過去の類似案件の事後評価結果も踏まえ,ADBとの協調融資により,我が国支援の取水施設,浄水場,貯水地,ADB支援の送配水網整備までを一つの事業として実施し,全体の進捗をADBとともに定期的にモニタリングすることで,案件の効率性を確保する。
(エ)有効性
安全かつ安定的な上水道サービスの提供により,クルナ地域住民の生活環境の改善に貢献することが期待される(給水人口273,000人(2010年)→706,000人(2018年:完成2年後)水道普及率22.6%(2010年)→62.3%(2018年:完成2年後))。また,気候変動による海面上昇の影響により増大することが予想される塩水遡上に対応した施設の設計とすることにより,同国の気候変動対策(適応)に貢献するものとなっている。更に,バングラデシュ経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(本件は,2010年4月にバングラデシュ政府より要請された案件であるため,本ガイドラインを適用するもの)(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html ),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース
(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。