評価年月日 平成24年2月17日
評価責任者:国別開発協力第三課長 堤 尚広
ウガンダ共和国
「ウガンダ北部アチョリ地域国内避難民帰還・再定住促進のためのコミュニティ再建計画」
本計画は,ウガンダ北部アチョリ地域5県(キトゥグム県,ラムウォ県,パデール県,アガゴ県,グル県)のコミュニティ基盤整備となる小学校37校121教室の増設,保健施設4か所の増設及び河川横断通路29か所の改修を行うものである。供与限度額は,11.53億円。
(1)本案件は,小学校の教室増設,保健施設の増設及び河川横断通路の改修を主たる内容としており,特段の環境社会影響は想定されないところ,JICA環境社会配慮ガイドラインにおいてもカテゴリーC(環境社会への影響が最小限)に分類される。
(2)以下の事項が,ウガンダ政府により実施される必要がある。
(ア)本計画により建設される教室等の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(イ)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。
(1)1980年代より20年以上にわたるLRA(反政府組織「神の抵抗軍」)との深刻な紛争を経験したウガンダ北部は,紛争の影響により,南部地域に比べて開発が遅れており,また特にアチョリ地域では200万人とも言われる国内避難民が発生した。
(2)こうした中,2006年8月にLRAとの停戦合意が実現し,ウガンダ政府による難民キャンプの閉鎖が急速に進められ,2005年に251あった難民キャンプは2009年までに110まで減少した。さらにUNHCRも2011年末までに全難民キャンプを閉鎖した。
(3)他方,難民キャンプの閉鎖に伴い帰還した国内避難民は,長年村人が不在で荒廃しきった元の居住村へ帰還しても,給水施設,診療所及びこれら施設にアクセスするための通行路等,必要最低限度の生活基盤が整備されていない状況であることから,結局は難民キャンプと元の居住村を往来する不安定な生活を余儀なくされている。また,キャンプに引き続き残留している人々も,夫を失った女性や子供,高齢・障害者等の社会的弱者が多数を占めていることから(2009年時点の難民数は10,190人:UNHCR調査),これら住民の定住を支援するための生活基盤整備を総合的に実施していくことが,早急に対応すべき課題となっている。
(4)このような状況をふまえ,ウガンダ政府は,国内治安の維持及び地域格差是正のため,北部地域の復興・開発を早急に対応すべき課題であると認識し,2007年に「北部ウガンダ和平・復興・開発計画(PRDP)」を策定した。ウガンダ政府は,北部地域の中でも紛争被害が特に深刻なアチョリ地域を中心に,これら難民キャンプ跡地の生活基盤整備を早急に行うことが不可欠であるとして,同計画に必要な資金につき,我が国に無償資金協力を要請したものである。
(1)平成21年度に実施した対ウガンダ紛争予防・平和構築無償「ウガンダ北部地域国内避難民帰還促進のための生活基盤整備計画」及び開発計画調査型技術協力プロジェクト「アムル県国内避難民帰還促進のためのコミュニティ開発計画策定支援プロジェクト」をふまえ,対象地域,施設規模及び機材供与の範囲を決定し,事業の効率的・効果的実施に努めた。
(2)同地域においてユニセフ等他ドナーが実施した教室及び保健施設建設事業(面積,仕様,平米単価等)等と本事業を比較した上で,適切な設計・仕様を決定するとともに,コスト削減に努めた。
(1)協力対象小学校37校における教室数が,132教室から253教室に増加し,教室内の過密状態が解消された適切な環境で学習できる生徒が7,128名(132教室×54名)から13,662名(253教室×54名)に増加する。
(2)協力対象地域における保健施設の入院患者受入人数が,現在の315名から960名に増加する。
(3)生活基盤整備により,アチョリ地域5県の国内避難民を含む住民約124万人の帰還及び定住が促進される。
(4)通行人の河川への落下,洪水による橋梁の流失,車両通行時の橋梁崩壊等の危険性が低減され,河川横断の際の安全性が向上する。
(5)協力対象地域の保健施設において,医療サービスの質が改善する。
(1)ウガンダ政府からの要請書
(2)JICA事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)