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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成23年2月23日
評価責任者:国別開発協力第三課長 石塚英樹

1.案件名

1-1.供与国名

 スーダン共和国

1-2.案件名

 カッサラ市給水緊急改善計画

1-3.目的・事業内容

 本計画は,東部カッサラ州の州都であるカッサラ市の人口増加により深刻化している水不足に対応するため,老朽化した給水関連施設を緊急に改善し,安全な水の安定供給を図るものである。供与額は10億8,600万円であり,浄水場の配水池,配水ポンプ棟,配水ポンプ等の給水関連機材の整備を行うものである。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がスーダン共和国政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備される給水施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

(2)先方政府が本計画により整備される給水施設運営要員の人件費等の予算確保を適切に行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)スーダン共和国は,アラブ・イスラム文化圏の北部とキリスト教・土着信仰文化の南部から構成され,同国内には,植民地統治時代の分断政策及び独立後の北部政府による南部及び国境地域支配を通じ,大きな経済的・社会的格差が存在する。2005年1月に内戦の終結を迎えたものの,20年以上に及ぶ内戦は,経済状況の悪化を招き,住民の基礎生活環境に大きな影響を及ぼしたほか,60万人以上の難民,約400万人の国内避難民が発生し,劣悪な環境下での生活を強いられている。また,国際社会の関心が南北和平問題やダルフール問題に集中したため,東部地域の復興開発は著しく立ち後れ,地域間格差が平和の定着における課題となっている。

(2)スーダン東部のカッサラ州の州都であるカッサラ市の人口は,国内避難民やエリトリア難民の流入により,1983年の約16万人から2008年には約30万人にまで増加しており,急増する水需要に供給が追いつかず,慢性的な水不足に直面している。また,給水関連施設・機材の老朽化が深刻であり,2009年11月には浄水場内の配水池が劣化,破裂する事故により給水が一時中断した。今後も施設・機材の劣化により安全な水の安定供給に支障を来す危険が高い。

(3)このため,スーダン政府は,給水施設を緊急に改修し,住民に安全な水を安定的に供給する計画を,スーダン東部及び周辺地域の平和と安定を確保する上での優先課題であるとして,右計画の実施に必要な資金につき,我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2-2.効率性

(1)本計画を実施するに当たっては,給水サービスを長期にわたり停止することが不可能なため,同じ場内に新規の施設を建設し,既存施設と新規施設の切替えを配管及びケーブルの調整によって行うことにより,給水サービスへの影響をできるだけ軽減するものとする。

(2)設計に当たっては,スーダンの給水施設標準設計・仕様に準拠することを基本としながらも,自然条件,材料調達,施工及び費用等の面において改善すべき点を修正し,事業実施の効率化を図る。現在の運用・維持管理技術の適用が可能となるように,配水ポンプ設備や塩素注入設備は既設の設備と同じ仕様とし,従来と大きく変更のない運転操作方式とする。

2-3.有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

(1)カッサラ市の浄水場施設において,施設の老朽化により配水池の破裂事故等の危険性が増加していく中で,本件の実施により,老朽化した施設が改修されることにより,住民約9万人に安全な水を安定的に供給することが可能になる。

(2)浄水場施設の配水池容量が適正な規模に改善されることにより,水源井戸からの24時間集水が可能となり,配水量が9,200立方メートル/日から約11,000立方メートル/日に改善される。

(3)関連機材の整備により,消毒剤の適切な投入量を実現し,安全な水の供給が可能となる。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)スーダン共和国政府からの要請書

(2)JICA(国際協力機構)の概略設計調査報告書

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