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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成24年3月7日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山正

1.案件名

(1)供与国名

 フィリピン共和国

(2)案件名

 第二次農地改革地域橋梁整備計画

(3)目的・事業内容

 本計画は,ルソン島東部オーロラ州内を流れるウミライ川の河口部で,現在は橋梁が存在しないため渡河の大部分をボートに依存せざるを得ず,台風通過時期など河川の増水時には渡河できなくなっている箇所において,新規に橋梁を整備するものである。本事業により,対象地では台風通過時期などの河川増水時にも通行することが可能となり,対象地域の両岸の周辺住民が,災害時の対岸への避難や保健医療施設への移動手段を確保できるようになる。供与限度額は13億9,400万円であり,橋長360メートルの新規橋梁及びその取付道路(265メートル)を建設する。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がフィリピン共和国政府により実施される必要がある。

ア 本計画により建設された橋梁の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

イ 建設用地,仮設用地の確保や障害となる構造物の移設等に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

(1)必要性

ア フィリピンでは,5~11月が雨期となっており,さらに6~10月にかけては北部を中心に台風がしばしば通過し,大きな被害を発生させている。特に河川に橋梁が無い地域においては,雨期,特に台風通過時期などには河川が増水するため,交通が断絶し,周辺地域から孤立する事態がしばしば発生している。特に貧困層が多い農村地域においては,自治体の自己予算によるインフラ整備が不足しており,雨期には域内外での移動手段を十分に確保できなくなりがちであるため,農業開発に必要な資機材等の確保にも支障を来し,結果的に農業開発が進まず貧困が改善されないという悪循環を招いている。

イ ルソン島中部のオーロラ州は,台風が年に2~3回は上陸する災害常襲地域であり,2011年秋の台風によっても被害を受けている。同州内を流れるウミライ川の河口部では,現在は橋梁が存在しないため渡河の大部分がボートに依存せざるを得ない状況になっている。このため,台風通過時期など同河川の増水時にはボートでの渡河が困難になり,交通が途絶し,緊急時・災害時の避難や保健医療施設への移動が困難になっているばかりか,災害後の復旧活動を行う上での妨げにもなっている。

ウ このような背景の下,フィリピン政府はウミライ川河口部における橋梁及びその取付道路の新設に必要な資金につき,我が国に無償資金協力を要請したものである。

(2)効率性

ア 対象橋梁については,周辺地域で建設が必要とされた橋梁のうち,台風通過時に河川の増水が原因で渡河できなくなることにより周辺地域から孤立する事例が発生しているなど緊急性が高く,かつ特に貧困指数が高く対象の地方自治体の自己負担による橋梁整備が困難で最も優先度が高いと考えられた地区に絞った。

イ 橋梁形式は,技術普及度が高く,標準的かつ設計・施行が容易で,維持管理も容易な形式とし,設計段階から可能な限り工事費を安く抑えるように努めた。

ウ 橋梁の質については,強度の面では台風による集中豪雨や周辺の河岸浸食,地震等といった厳しい自然条件に耐える,安全性が高く災害に強いものとする一方で,幅員等の面では周辺地域における交通量等も考慮して必要十分なレベルに限定した。

(3)有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

ア これまで台風通過時期などの河川増水・洪水時に対岸への交通途絶が発生していた地点で新規に橋梁を建設することにより,災害時の対岸への避難や保健医療施設への移動手段が確保できるようになる。

イ 年平均6日程度渡河不能な日が発生していた地点で年間を通じて渡河手段が確保され,かつ,これまで渡河に25分程度かかっていたところが1分弱に短縮されることにより,農業開発に必要な資機材等の確保も安定し,農業開発が進めやすくなることで,周辺地域住民の生活環境改善,ひいては生計向上が期待できる。

ウ フィリピンは我が国と東南アジア,中東,欧州を結ぶシーレーン上に位置する近隣国であり,地政学的にも重要性が高く,貿易・投資等の観点からも関係が深い。また,昨年9月のアキノ大統領訪日の際に野田総理との間で署名された「特別な友情の絆で結ばれた隣国間の『戦略的パートナーシップ』の包括的推進に関する日比共同声明」の中でも,防災・災害対策の分野において二国間の協力関係を強化していく方向性が確認されており,我が国が本計画により災害に強い橋梁の整備を行うことは,いわゆる「日本の顔の見える事業」として,その外交的効果も大きく,両国の友好関係を強化するものである。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)フィリピン共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書及び事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)フィリピン国別評価(平成22年度外務省第三者評価)

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