評価年月日 平成23年7月28日
評価責任者:国別開発協力第一課長 横山 正
ラオス人民民主共和国
国道九号線(メコン地域東西経済回廊)整備計画
本計画は,メコン地域の重要路線である「東西経済回廊」の一部を成し,ラオスの経済活動の促進において重要な役割を担う国道九号線のうち,損傷の激しい一部区間(計約57キロメートル)を改修するとともに,将来必要となる大規模改修を同国にて適切に実施するため,施工監理マニュアルの策定等の技術支援を行うものであり,供与限度額は32.73億円である。
本計画により,東西経済回廊の一部を成す国道九号線の円滑な通行が可能となり,物流が活性化することによって,ラオス中部地域における貿易・投資の促進,ひいては地域経済の発展に繋がることが期待される。
(1)環境社会配慮
工事中の土壌流出,水質汚染等については,雨季中の土木工事回避等により,同国国内の環境基準を満たす見込み。また,本事業対象路線の一部は国立公園及び森林保護区を通過するが,今次の工事は拡幅を伴わない既存道路の改修であることから,自然環境への望ましくない影響は最小限であると予想される。
本事業は数世帯の非自発的住民移転を伴い,同国国内手続および簡易住民移転計画に沿って移転が進められる。
なお,本事業は,ラオス公共事業運輸省が実施中の汚染対策,住民移転等についてモニタリングすることとなっている。
(2)外部要因リスク
沿線における新規鉱山開発等による,重量車両通行の急激な増加。
(3)先方負担事項
以下の事項がラオス政府及びサバナケット県公共事業運輸局により実施される必要がある。
ア 住民移転・用地取得
イ 環境社会配慮モニタリング費用の拠出
ウ 工事実施に必要な物資置場等の提供
エ 工事の支障となる既設電柱・電線の工事着工前の移設
(1)ラオスの国家開発計画「第6次国家社会経済5カ年計画(NSEDP)」において,社会経済開発のためのインフラ整備が課題とされ,特に,隣国とつながる国際道路の整備に注力するとしている。
(2)ラオスは内陸国であり,道路輸送による物流の重要性が非常に高い。特に国道九号線は,インドシナ半島を横断する東西経済回廊の一部を成すことから,タイ・ベトナムとの経済・社会的関係強化,ASEAN統合に向けた域内の経済格差是正及びラオス中部地域の経済発展のために,非常に重要な道路である。
(3)1999年度~2003年度にかけ,我が国及びアジア開発銀行が改修を実施したが,2008年ごろから道路に損傷が発生し始めた。その背景には,国道九号線付近にあるセポン鉱山からの採掘開始に伴う大型トレーラーの通行量の増加や,軸重規制が緩和(9.1トンから11トンへ変更)されたことによる大型車両の通行量の増加などにより,道路への負担が増加したことが挙げられる。損傷の範囲は拡大かつ大規模化し,国道九号線の円滑な通行に支障を来たしている。
(4)ラオスは,国道九号線の重要性にかんがみ,国全体の道路維持管理予算の約4分の1を国道九号線の補修工事に充てるなど,最大限の努力を行っているが,損傷の拡大を予防するための日常メンテナンスを行えていない。そのため,前述の道路損傷にかかる大規模な改修が必要な状況となった。
(5)ラオス政府が大規模な改修予算を確保することは極めて困難であることから,国道九号線の構造強化に必要な資金につき,我が国に対して無償資金協力が要請された。
(1)本計画で改修する対象範囲を,損傷の度合いが高く,かつ,改修に十分な技術力が必要な最小限の範囲に限定し,他の軽微な損傷部分はラオス側の自助努力を促すこととした。具体的には,国道九号線全線約244キロメートルのコンクリート舗装を要請されたが,計57キロメートルの区間をアスファルト舗装で整備することとした。
(2)コスト縮減及び環境配慮の観点から,路盤材料として既存道路面の再活用を可能とする路上再生路盤工法を一部区間において採用することとした。
(1)国道九号線の舗装の耐久性が向上し,通行可能な車両の重量が9.1トンから11トンに増加する。
(2)改修後の道路の平坦性が保たれ,通過車両の安全性及び平均通行時速が向上する。
(3)国際幹線道路の整備による物流の改善により,ラオス国内の農業・商業等の経済活動が活発化し,また,メコン地域の経済・貿易等地域経済の発展,貿易・投資の促進が図られる。
(4)我が国は,1955年の外交関係樹立以降,ラオスと友好関係を築いてきており,加えて,昨年11月の日メコン首脳会議においてメコン地域への一層の協力を表明している。ラオスが重視する本計画を支援する外交的意義は大きく,日本とラオスの二国間関係強化への効果が期待される。
(1)ラオス人民民主共和国政府からの要請書
(2)JICAの準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)